「徳川史観」から江戸時代を眺めてみる
『日本人の遺伝子』徳川恒孝著 書評
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著者の徳川恒孝さんは徳川宗家第18代当主とのことで世が世なら将軍のお立場でいらっしゃった方です。
徳川最後の将軍が15代ですから、少なくともその後3代は受け継がれているということですね。
学生時代にロンドンに在住したり、日本郵船入社後にはニューヨークに在勤されたりと海外在住経験も豊富なようです。
本書では日本人のルーツから日本の始まり、日本の文化構造、江戸時代の果たした役割といったように大きな視点で徒然と日本について書かれています。
世界的な視野から日本を眺めるような感覚で、これは将軍の血筋と海外経験がベースになっているように思われます。
面白いのが江戸時代に対する評価でこれはかなり「徳川びいき」になっています。
265年の平和な時代の中で、建築や料理、演劇、絵画、着物、家などあらゆる文化が成熟し、明治以降に明治政府は蛮行により破壊が進み、「文明開化」ならぬ「文明退化」が起きてしまったとのこと。
これはユニークな「徳川史観」ともいえます。
また、「参勤交代」の評判が良くないことも取り上げ、各大名間の交流が深まり、各地の幅広い知見を得ることが出来たのはメリットであるとも語っています。
立場によって歴史の見方は解釈が変わってしまうものだと感じ入ります。
徳川さんは日本人の特徴として、「調子に乗り反省する気質」と述べています。
先の大戦から大敗、その後の経済発展から低迷とその流れをみると確かに納得できる部分も。
日本は空気によって誤った方向に流れるきらいはあると思うので、そのあたりは気をつけなければいけません。
最後に、現代社会においていくつか提言を行っていますがこちらも関心を持ちました。
シーズンタイム制の導入を掲げ、涼しいうちに会社に行き、明るいうちに帰って早寝をする。
現在、少しずつ実施が行われていますが、よりナチュラルな生き方に今後はシフトしていくのかもしれません。
江戸時代の時のように、森に満ち、縦横に水路の通った都市にすべきとも述べており、現実性はともかく、一つの理想形ではあると感じました。
やはり著者のバックボーンには将軍として君臨していた江戸時代があり、それはいつになっても根付いているものなのでしょう。
こんな人におススメ!
・歴史が好きな人
・俯瞰的に日本の良さを捉えたい人
・将軍家の物の考え方を知りたい人
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読書日:2014年1月
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