初期の作品が熟練した村上春樹さんの手でよみがえる
『図書館奇譚』村上 春樹著 書評
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本書は『ねむり』と同じドイツ人の画家カット・メンシックによるイラストで、しゃれた装丁で仕上げた作品です。
ドイツ語版を改めて日本語版に逆輸入して再発売となりました。
あとがきによるとこの話は何と4つのヴァージョンがあるのだそうです。
最初が1982年に掲載されたもの。次に講談社から出ている『村上春樹全作品1979〜1989』に収録する際に、文章にいくらか手を入れたヴァージョン2。
佐々木マキさんのイラストで幾分子供向けにリライトし絵本として発売したヴァージョン3。
そして今回の逆輸入を機に改めて絵の雰囲気に合わせてリライトしたのが、ヴァージョン4になるというわけです。
最初のヴァージョンは『カンガルー日和』という本に収録されており、私も読んだ記憶があります。
羊男(羊男史上、最もリアルな羊男が描かれています)が出てきたり、「脳をちゅーちゅー吸う」シチュエーションなど村上作品の中ではファンタジー寄りの作品。
しかしこれらの要素は踏襲されながらも、以前読んだ時のイメージとは全く違った印象を受けました。
それは文章に深みがあり、重厚感が感じられること。これは春樹さんが作品を生み出し続けていくうちに変化したものなのでしょう。
旧作のリライトではありますが、どちらかというと新作の延長上の作品という印象を受けます。
ずっと春樹さんの作品を読み続けている私ですが、このような作品を改めて読んでみると、春樹さんが書く文章の変化を改めて感じ取ることが出来ます。
その意味では貴重な作品となりました。
こんな人におススメ!
・短時間で村上春樹の世界に浸かりたい人
・村上春樹さんの文体の変化を感じ取りたい人
・極めてリアルな羊男のイラストを見てみたい人
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読書日:2015年5月
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