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映画「踊る大捜査線」がもたらした功罪

『「踊る大捜査線」は日本映画の何を変えたのか』日本映画専門チャンネル編

 

『「踊る大捜査線」は日本映画の何を変えたのか』日本映画専門チャンネル編

 

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劇場公開された「踊る大捜査線」は1作目が興行収入50億円(日本歴代実写映画4位)、2作目が173.5億円(日本歴代実写映画1位)という驚異的なヒットを記録しました。

 

このような空前のヒット映画はどのように生まれたのか?また、日本映画にどのような影響をもたらしたのかという内容を立場の違う10人の方々が本書で論じています。

 

今回、執筆しているのは下記の方々。職業がバラバラであるがゆえに多様な意見が飛び出しています。

 

・掛尾良夫(キネマ旬報 映画総合研究所所長)
・佐藤忠男(日本映画学校校長 映画評論家)
・飯田裕久(元警視庁捜査一課刑事 刑事・警察ドラマ監修)
・樋口尚文(映画評論家 クリエーエィブ・ディレクター)
・中野淳(日経パソコン編集長)
・名越康文(精神科医)
・荒井晴彦(脚本家 映画監督)
・白木緑(日本経済新聞記者)
・斉藤守彦(映画ジャーナリスト アナリスト)
・亀井千広(フジテレビ 映画プロデューサー)

 

面白いのはこの映画に対し、中立的だったり、批判的な立場の人の意見も載せていること。そして、私が共感したのは批判的な意見の方でした。

 

荒井晴彦さんは「日本映画の劣化が止まらない」というタイトルで書いていますが、共感する部分が多々ありました。

 

映画というのは生き方を変えるような力を持っているという荒井さんの見解に私も同意見です。

 

そして、荒井さんはそういう1本の映画に出会うためには100本も200本も見なければならないと述べています。

 

そして、やっと運命の1本と出会い何かが変わるのだそうです。

 

しかし、今は生き方を根底から覆すような力を伴った映画がなくなっており、「踊る大捜査線」はその典型であると語ります。

 

確かに、私のこの作品を観ましたが、何も残らない映画であったという印象です。

 

それは、登場人物に深みがなく、小ネタをちりばめ、表層的な仕掛けをふんだんに取り入れた、いわば「薄っぺらいファーストフードのような映画」であったと感じます。

 

その証拠に、年がたつにつれてこの映画の輝きはなくなってきている気がします。

 

いつまで経っても観られ続けている「男はつらいよ」と真逆の性質を持った映画であるといえるでしょう。

 

もちろん、商業的にこれだけヒットしたわけですから、ビジネスの側面からしたら大成功ということになるのでしょう。

 

しかしながら、テレビの延長線上に映画を捉えてしまう現状は悲しくもあるのです。

 

もう一つ、中野淳(日経パソコン編集長)さんは公開時のインターネットでの宣伝方法に賛辞を送っていますが、このころはまだテレビの補完ツールとしての立ち位置だったのかと思うと、ネットの発展の速さに恐ろしさを感じます。

 

今や、ネットフリックスなど動画配信サービスはテレビ局を脅かす存在になっており、ピース又吉さんの「火花」のドラマ化はテレビ局ではなく、ネットフリックスで配信されることが決まっています。

 

これからもテレビ局はネット動画配信サービスに脅かされ続けることになるでしょう。

 

「踊る大捜査」のようなドラマの映画化という形式はは今や簡単にヒット作は出ない状況になっており、この時代このタイミングだから大爆発したトレンド要素の高い作品であったのだなと認識するのです。

 

こんな人におススメ!

・史上空前の大ヒット「踊る大捜査線」に関し、様々な立場の人からの意見を聞きたい人
・最初の2作公開当時(1998年・2003年)の時代状況を感じ取りたい人
・「踊る大捜査」が大ヒットになった原因を分析したい人

 

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読書日:2014年2月

 

『「踊る大捜査線」は日本映画の何を変えたのか』日本映画専門チャンネル編

 

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