トップページ > 【評価順】スポーツの本> 【読書感想】『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』増田 俊也
歴史に埋もれていた「木村政彦」を復権させた価値ある一冊
『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』増田 俊也著 書評
サイト管理人の評価
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本書は私がずっと読みたいと楽しみにしていた本です。やっと手に取る機会にめぐまれました。
その面白さは評判で、大宅壮一ノンフィクション賞、新潮ドキュメント賞をダブル受賞しています。
著者が取り上げている木村政彦(1917年〜1993年)は、史上最強の柔道家と称される人物。15年間不敗という金字塔を打ち立てました。
さらに、「400戦無敗」の異名をとったヒクソングレイシーの父、エリオ・グレイシーともブラジルで勝負し、勝利しています。
しかしながら後にプロ柔道を立ち上げたことで柔道界からは冷遇され、また、力道山との決闘を行い、事前の取り決めを破った力道山の奇襲により敗北。
以後は「力道山に敗れた男」程度の扱いになってしまうという、不遇の半生を送ることに。
著者の増田俊也さんはこの人物にスポットライトを浴びせるべく、丹念に取材をこなし、その生涯を辿っています。
本書をきっかけに木村政彦の存在は一気に世間一般に知られることになりました。
この作品は増田さんが18年もの時をかけ資料収集、執筆(『ゴング格闘技』で2008年〜2011年に連載)を行った魂が込められたものです。
膨大な資料をベースにしている本作品は木村政彦が極めてリアルに描かれており、ちょっとしたエピソードについてもしっかりと調べているのがわかります。
2段組700ページというとても厚い本ですが、全編熱気が込められていて一気に読ませてくれます。
「3倍努力」を掲げた10時間を超える凄まじい練習量、そして、「負けたら腹を切る」という悲壮な覚悟。
そんな木村が力道山にだまし討ちのような形で敗北を喫してしまい、力道山は早々と死ぬ中、屈辱の想いを受け止たまま生きながらえたその心情はどれほど辛いものであったのかと察すると心が痛みます。
この辛い気持ちと著者増田さんの気持ちがシンクロしているのが本書でありありとわかり、増田さんも泣きながらこの箇所を書いているのではないかと推測してしまうほどです。
本書は格闘技初心者でも読めると思います。それほど人を引き込ませるほどの魂が込められた作品に仕上がっています。
機会があれば是非、読んでいただきたい一冊です。
こんな人におススメ!
・完成まで18年間を要した極上のノンフィクション作品を読みたい人
・木村政彦という伝説の柔道家の生涯を知りたい人
・分厚い読み応えのある本に浸りたい人
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読書日:2015年9月
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