未だに判明しない西郷隆盛の素顔を追う
『消された「西郷写真」の謎』斎藤 充功著 書評
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著者の斎藤充功さんはノンフィクション作家。歴史、国家、情報といったテーマを中心に作品を発表しています。
日本史上でのミステリーの1つ。それは、「西郷隆盛の写真は存在しない」というもの。
西郷隆盛は写真嫌いであり、写真を一枚も撮らなかったとされています。よって西郷隆盛の本当の素顔は今もなおわからないままなのです。
西郷隆盛の顔といえば、おそらく上野公園にある銅像をイメージする人が多いでしょう。
しかし、これは見本となる写真がなかったため、お雇い外国人だったイタリアの版画家キヨッソーネのコンテ画を元に西郷の知己・親戚に逐一聞き、制作を進めたとされています。
しかしながら、そんな中でも過去に「これぞ西郷の真正写真!」と伝えられた写真も少なくない数が存在します。
それらの写真の真贋に焦点をあて、実状を調査していくというのが本書の内容になっています。
本書で特徴的なのはその写真の鑑定を法人類学の大学教授が行っているところ。
法医学の観点から検証していくという手法は注目に値します。
本物の西郷さんの写真では?と言われていた写真は実はけっこう多くあるのだなということがこの本でわかりました。
幕末・維新の英傑が一堂に会し、写っているとされている「フルベッキ群像写真」や内田九一が撮影し、顔の輪郭がスイカに似ていることから「スイカ西郷」と呼ばれた写真など。
謎が謎を呼び、多くの素顔の候補写真が生まれたようです。
それぞれの写真の経緯、さらには明治天皇まで言及し、興味深く読むことが出来ます。
最終的に残念であったのは、しっかりとした結論が出なかったこと。
ある程度深堀して結論を導き出して欲しかったのですがここは物足りなさを感じました。
但し、日本史のミステリーを辿る展開としては面白く読むことが出来たので、歴史好きには楽しめる内容になっていると思います。
こんな人におススメ!
・日本史のミステリーに興味がある人
・歴史に対し法医学の視点からのアプローチ法を知りたい人
・明治初期の雰囲気を感じたい人
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読書日:2014年7月
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