トップページ > 【評価順】エッセイの本> 【読書感想】『僕の死に方 エンディングダイアリー500日』金子哲雄
死を前にしてどこまで覚悟が出来るのか
『僕の死に方 エンディングダイアリー500日』金子哲雄著 書評
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現時点で今年一番の衝撃を受け、人生観が変わるほどの良書でした。
著書の金子哲雄さんは流通ジャーナリスト。
2012年10月2日にお亡くなりになっていますが、『ホンマでっか!?TV』など多数のTV番組にご出演され、死去した当時も話題となりニュースに取り上げられていたのでご存じの方も多いと思います。
本書は死を覚悟した8月末から書き始め、最後の記述が9月27日で終わっています。
死と隣り合わせの状況下で一か月で書かれた魂の一冊になっています。
前半ではご自身の生い立ちから流通ジャーナリストになり、人気が出始めるまでが書かれています。
後半はそんなさなかに死の宣告をされ、そこからなんとか生き延びようとす不断の努力、そして死を覚悟してからの想いを綴っています。
金子さんが生き延びようと奔走された時の体験は医療界に大きな課題を突き付けています。
大きな病院は生きる見込みのない患者を助けようとはしません。それは、患者が死ぬことでその医療施設の成績が悪くなるのを避けるためなのだとか。
大きい医療施設の門前払いが続き、これはやはり患者の視点から考えると間違ったことなのではないかと思います。
また、本書で印象が強かったのは治療でももうどうにもならなくなり死を覚悟してからの生き様です。
本書を書いて医療業界の実情を伝えようという姿勢もそうですし、最後の最後まで仕事をこなし楽しんでいる姿勢、参加した全員に感謝の想いを伝える葬儀のプロデュースなど実際自分が死ぬ寸前になったらここまでのことが出来るのだろうかと考えずにはいられません。
この死を目前にしてからの行動は生きることのありがたみを感じますし、私の生き方にも影響を与えることになるでしょう。
9月27日、つまり最後の記述はとても胸が苦しくなります。
体が動かず、自殺して苦しみから解放されたいが、動けないのでそれさえも出来ないと訴えており、心に突き刺さります。まさに魂の叫びです。
後書きは金子さんの奥さんが書かれているのですが、こちらも興味深いエピソードがありました。
それは、8月下旬に金子さんにお迎えが来た気配を奥さんがはっきりと感じ、「もうちょっと待っていただけませんか?」と頼んだこと。
そしてその後奇跡的に回復し、10月まで生き延びたことです。
このことがなければ本書も生まれなかったわけで実に不思議であるという他はありません。
こんな人におススメ!
・死を目前にしてどのように生きるべきかを知りたい人
・現代の日本の医療業界の課題を知りたい人
・死後の世界について不思議な体験を知りたい人
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読書日:2015年6月
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