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脚本に対する真摯すぎる態度が命を縮めた

『映画館に、日本映画があった頃』野沢 尚著 書評

 

『映画館に、日本映画があった頃』野沢 尚著

 

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著者の野沢尚さん(1960年5月7日〜2004年6月28日)は脚本家であり、木村拓哉主演の連続ドラマ『眠れる森』や豊川悦司主演の連続ドラマ『青い鳥』が代表作。

 

また、北野武監督デビュー作『その男、凶暴につき』の脚本を手掛けたことでも知られています。

 

私は大学生の頃、シナリオライター養成スクールに行き、シナリオライターになることを目指していました。

 

その時に多くのシナリオを読んでいましたが、中でも野沢さんの作品はとても好きでした。

 

エッセイなども読んでいたのですが、脚本作りに対し、とても情熱を注いでおり、その信念は他の脚本家とは群を抜いていました。

 

私の大好きな作品、司馬遼太郎の『坂の上の雲』の脚本を野沢さんが担当するというニュースを知りとても楽しみにしていたのですが、首つり自殺をしてお亡くなりになります。

 

とても惜しい人材が亡くなったと当時は痛感しました。

 

本書は『月刊シナリオ』で1990年9月号から1995年1月号まで連載していたエッセイをまとめたものとなっており、この期間の映画評、そして、自分の作品の振り返りを書く内容になっています。

 

エッセイでは多くの日本映画を自腹で観に行き、感想を述べています。

 

『稲村ジェーン』『グッバイ・ママ』『いつかギラギラする日』など、懐かしい名前が多く、いつか観てみたいなと思うものばかり。

 

論評はさすがプロの脚本家といった印象。

 

主に主人公の心情にフォーカスし、「私ならこう書く」というように持論を展開します。

 

仕事に対し、強い芯を持っていた方なんだと改めて認識させられます。

 

また、この時期に執筆した作品についても多く語っています。『ラストソング』『課長島耕作』『その男、凶暴につき』など。

 

ここでわかったのは、脚本は脚本家だけで完成するものではなく、プロデューサーや役者、監督など様々な人の意向を反映させなければいけないということ。

 

このことは職人気質である野沢さんにとって、かなりのストレスになっていたようで、毎回のようにトラブルを起こしていたことがわかります。

 

これは野沢さんの真面目すぎる性格ゆえのことなのでしょう。

 

全編を通して、野沢さんの作品作りに対する熱い想いが伝わります。

 

一方、だからこそ周囲とうまく調和出来ず自殺に追い込まれてしまったのかもということもよぎります。

 

いずれにしろ、素晴らしい人材を亡くしてしまったと改めて嘆かざるをえません。

 

こんな人におススメ!

・映画やドラマが好きな人
・脚本家志望の人
・90年代前半の日本映画を振り返りたい人

 

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読書日:2015年9月

 

『映画館に、日本映画があった頃』野沢 尚著

 

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