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強くて優しかったプロレス界のスーパースター

【読書感想】『伝説になった男―三沢光晴という人』徳光 正行著 書評

 

『伝説になった男―三沢光晴という人』徳光 正行著

 

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本書で取り上げられている三沢光晴さんはプロレスラー。ジャイアント馬場率いる全日本プロレスに入団し、2代目タイガーマスクとして活躍した後も団体のエースとして絶大な人気を誇りました。

 

その後、2000年にプロレスリング・ノアを旗揚げ。レスラー兼社長として同団体をけん引しました。

 

しかしながら、2009年6月、試合中に突然倒れ急遽。大々的にニュースで取り上げられたのでご存じの方も多いかもしれません。

 

私は子供の頃からプロレスが好きで時折試合を観ています。特に高校生の頃は全日本プロレスが全盛期の時代で、エース格であった三沢さんはとても好きでした。

 

ノアを作ってからも武道館で試合を観たこともあり、私の青春でした。

 

それだけに突然の死去のニュースは強いショックを受けたことを覚えています。

 

著者の徳光正行さんは元日本テレビアナウンサー徳光和夫さんの次男であり、現在はキャスターやタレント活動をされています。

 

熱狂的なプロレスファンであった徳光さんは父から三沢さんを紹介され、一時期は毎日のように飲みに行く仲だったそうです。

 

本書はそんな徳光さんが生前の三沢さんとの数々のエピソードを紹介する内容になっています。

 

試合では無口でぶっきらぼうなイメージが強い三沢さんですが、本書を読んで、とても優しくて仲間思い。

 

私利私欲がなく、プロレスに対してとても深い愛情を注いでいる方だったということがよくわかりました。

 

それは、メディアに登場する姿からは決して見えてこない部分であり、それだけの資質を持った人物だったからこそ多くのファンから絶大な人気を誇っていたのだろうなということがわかります。

 

三沢さんの優しさには偽善さはかけらもありません。一見するととてもぶっきらぼうです。

 

例えば徳光さんに対する呼び方も、最初は「とくみっちゃん」だったのが、「徳光」から「お前」に、果ては「てめえ」「この野郎」とドンドン雑になっていたそうです。

 

それでも徳光さんとしては、距離がどんどん近づいていくような気がして嬉しかったのだとか。

 

普段はとても気さくな三沢さん。

 

例えば、三沢さんと親睦旅行に行った時にはエロしりとりを延々と朝の6時まで続けたり、徳光さんの友達の顔に油性マジックで直接タイガーマスクの顔を描き、そのまま家まで帰らされたり、知人の結婚式のスピーチで新郎の女性遍歴を大暴露して親族がカンカンになってしまったり。

 

それでもいつも周囲に多くの人が集まってくるというのは人徳がある証拠なのでしょう。

 

そして、優しさが滲みでている数々のエピソード。

 

当人は極めてナチュラルな言動をしているとわかるので、根本的に心がとても暖かい人なんだろうなというのがよくわかります。

 

・上野の飲み屋で意気投合した常連客にママさんバレーに誘われ、約束を守り本当に参加してご婦人方は大喜びだった

 

・徳光さんが子どもの頃に三沢さんに送ったファンレターについて、書いた内容まで覚えてくれていた

 

・容姿があまり良くないカップルを見つけると、「あいつら、巡り合えて本当によかったなあ。幸せになってほしいなあ」と、自分のことのように真剣に喜んでいた

 

・自分本位の考え方や行動を徳光さんがした時、三沢さんはいつも真剣に怒った

 

・全日本プロレス時代、レスラーの地位向上、生活環境改善のため、自分が泥をかぶろうという決意のもと、契約金について経営陣と調停の交渉を行っていた

 

三沢さんは最後の方は骨格から矯正しなければいけないくらい身体を悪くしてしまい、身体を新しく生まれ変わらせるくらいの覚悟でメンテナンスをする必要があるほどの状態に陥っていたそうです。

 

しかしながら、それでもファンのことを想い、無理をしてでもいつも試合に出場し続けてしまっていた。そのことが試合中の死に繋がってしまう出来事を引き起こしてしまったのです。

 

三沢さんの優しい性格がアダになってしまった悲しい事実です。

 

三沢さんの輝かしいパフォーマンスは忘れることが出来ず、今でも元柔道家小川直也さんや宿命のライバルといわれた川田利明さんとの闘いは動画でみてしまいます。

 

これだけの人材を失ってしまったことは非常に残念であり、いつまでも語り継がれて欲しい人物です。

 

こんな人におススメ!

・メディアには出なかった三沢光晴さんの真の人柄を知りたい人
・本当の優しさについて考えてみたい人
・プロレス界の現状を知りたい人

 

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読書日:2014年9月

 

『伝説になった男―三沢光晴という人』徳光 正行著

 

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