世界情勢の裏に潜む真実を知り、「世界観」を変えてしまう力を持つ良書
『プーチン 最後の聖戦』北野 幸伯著 書評
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本書の「はじめに」において、「この本を読み終えたとき、あなたの世界観は一変しているはずです。」と書いてあるのですが、読了後まさにその通りに世界情勢の捉え方がまったく変わってしまいました。
本書で紹介されている数々の主張は、一見すると「トンデモ本の類か?」と思えてしまうのですが、新聞各紙の報道記事などを引用して説明しているので、裏付けがしっかりあり、私達がいかに普段のニュースに洗脳されて世界観を形成していたかがよくわかります。
著者の北野幸伯さんはモスクワ在住の国際関係アナリスト。
ロシア外交官とFSB(元KGB)を専門に養成するロシア外務省付属「モスクワ国際関係大学」を、日本人として初めて卒業した人物です。
本書はタイトル通りプーチンの政治録になっており、プーチンが国内で絶対権力者になった経緯や最初の大統領時代、首相時代、大統領に再登板した後の未来予想(本書は2012年4月刊行)が描かれています。
ロシアの権力闘争についての資料は今までほとんど読んだことがなかったので、ロシア国内でどのような政治勢力が存在し、その中でプーチンがどのように権力を固めていったかがよくわかりました。
しかしながら本書はプーチンの話題にとどまらず、世界全体の情勢について取り上げており、通常のメディア報道からは見抜けない「真実」に迫っています。
例えばこれは既に有名ですが、2003年にアメリカ軍が行ったイラク開戦。
ニュース報道では大量破壊兵器計画阻止を大義名分にしていましたが、実際には同兵器は存在しなかったことが判明されています。
さらに、2007年の時事通信の記事で、グリーンスパン前FRB議長が「イラク開戦の動機は石油利権だった」と暴露しているのです。
このような様々な出来事の真実が、様々な証拠資料をベースに明かされており、圧巻です。
・2003年グルジア「バラ革命」、2004年ウクライナ「オレンジ革命」、2005年キルギス「チューリップ革命」な、どロシア勢力圏で起きた一連の革命の背後にあったのはアメリカの手引きだった。
・プーチンの後に大統領になったメドベージェフは次第に欧米の策略に染まるようになっていった。
・「ロシアが悪」と報道されていた2008年のロシア・グルジア戦争は、実は先に仕掛けていたのはグルジアで欧米のプロパガンダにより印象操作されていた。
などなど。
背後には覇権を狙うアメリカ・西ヨーロッパの姿があり、プーチンはそれに対抗すべく中国と手を組み対峙していることがわかります。
普段ニュースに接していると、アメリカは「正義」の名のもとに世界を守っているイメージがありますが、これこそ洗脳の成果であり、利権を狙った国家的な戦略であったことに気づきます。
本書のクライマックスは、2008年のリーマンショックによる「アメリカ一極時代」の終焉とこれからの世界情勢についての記述でしょう。
プーチンは「アメリカ一極世界」に反対し、「多極世界」構築を目指し活動しています。
その基軸となる戦略は「ドル体制」の崩壊。
ドル建て決済をなくすよう世界に働きかけています。これこそが、本書タイトルにある「聖戦」です。
北野さんは本書の後半で、「国家ライフサイクル」をもとにこれからの国際情勢を予見し、秀逸な分析をされています。
例えば、1500年から見ると、世界の覇権はスペイン→オランダ→イギリス→アメリカ・ソ連→アメリカと変化しています。
このように国単位でもサイクルがあるというのが北野さんの主張です。
日本で言えば、1980年代後半が全盛期であり、バブル崩壊により成熟期へ移行しています。
中国はこれに30年遅れで進んでおり、2020年まで成長期が続くことを北野さんは伝えています。
「アメリカ一極時代」の次は、「米中二極時代」、そして「中国一極時代」が到来することが前提としてあります。
また北野さんはアメリカが衰退期に入るにあたり、将来的に財政的に賄いきれず、アジアにある軍事拠点を撤退する可能性を示唆しています。
その時、日本はどうなるか。とても重要な岐路に立たされることになりそうです。
このように本書を読むと、私達はニュース報道によりいつのまにか洗脳され、特に欧米に都合の良い見え方をしていることがわかります。
しかし視点を変えると、様々な事象には「見えない利権目当ての仕掛け」があり、真の目的や動機を探る目が必要になるということが痛感させられます。
まさに「世界観」を変える力を持つきっかけを与えてくれる、素晴らしい一冊でした。
こんな人におススメ!
・世界情勢の「真相」を知りたい方
・ニュース報道がどのように「洗脳」を仕掛けているか知りたい方
・これからの各国のパワーバランスの行方を確認したい方
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読書日:2015年10月
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