期待に反して失墜した、政党から組織運営を学ぶ
『民主党政権とは何だったのか』山口 二郎 中北 浩爾 編 書評
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民主党が総選挙で勝利し、15年ぶりの政権交代を果たした2009年9月、日本国民はこれからの民主党の政治に大いに期待をしていたものです。
しかしながら、その期待は早々に裏切られ、そして裏切られ続け、民主党政権はわずか3年3ヶ月で終了してしまいました。
そして、民主党は今もなお立ち直ることが出来ず、この3年3ヶ月は政治の黒歴史とさえされている感があります。
このように期待に反し、失速してしまった民主党政権について、その要因をいつかしっかりと捉えてみたいと思っており、本書はそれにうってつけの一冊でした。
本書は歴代3人の首相や幹部など、民主党政権を担った主要人物のインタビューをもとに構成されています。
政権初期の中心人物である小沢一郎がいないのは残念ですが、物事に対する捉え方・評価が、人により異なり、そもそも党内の統一感が全くない組織であったのかなとも感じられます。
本書を読んで、民主党政権がうまくいかなかった要因は次の2点に集約されると感じました。
・理想主義的でありすぎ、政治的リアリズムが欠如していた
鳩山由紀夫が首相になってから、実現不可能なマニフェストが次々と出てくることになります。
子ども手当や高速道路の無料化、ガソリン税などの暫定税率の廃止などは財源不足から規模が縮小、もしくは撤廃。
菅直人が首相になってからは、突然消費税10%を掲げ、大きな反発を受けています。
さらに沖縄の米軍基地の県外移設、八ッ場ダムの建設中止など混乱に混乱を重ね、いづれも実現させていません。
結局、民主党が掲げたマニフェストの大半は、実現不可能な理想的な条項に過ぎず、そのことを我々国民が見抜けず投票してしまったということなのでしょう。
・派閥対立があり、組織の一体感が全くなかった
本書の各人のインタビューでは、党内の別の人の処置に対して、「意図せぬ形で決められてしまった」という発言がとても多く感じられました。
その代表は小沢一郎であったりするのですが、組織を俯瞰しても、小沢派と反小沢派の対立があり、それが内部混乱を引き起こしてしまっているようです。
党内で派閥を形成し、切磋琢磨するのは悪いことではないと思いますが、その対立が悪い方に影響を与えてしまっており、混乱に次ぐ混乱を引き起こし、自滅してしまった感さえあります。
3人の首相の中では最後の野田佳彦が大局的に見れて、骨のある人物であったと感じます。
既に民主党の支持率が低下し、政権維持が困難と目されている中、消費税引き上げを決定したのは、野田政権最大の功績とされています。
身を切った決断が民主党政権終焉の引き金になってしまったのは、皮肉ではありますが。
見込みの甘さと組織内の内部分裂。
これは政治に限らず、どんな組織でも失敗の要因につながることでしょう。
そして、それを防ぐには強烈なリーダーシップをとれる人物が必要なのだと思います。
残念ながら民主党には、このような腹の据わったリーダーが存在しなかったのではないでしょうか。
巻末に編集者の山口二郎氏は民主党の将来について、楽観的に見ていると述べています。
現状の民主党を見ていると、対案を出さず、批判だけを繰り返す。
まるで「出来の悪いサラリーマン」のような印象を持ってしまいますが、健全な政党政治を機能させるためにも、有望なリーダーの誕生を期待したいものです。
こんな人におススメ!
・うまく運営出来なかった組織の要因分析をしたい人
・民主党政権時代の総括をしたい人
・マネージャー以上の管理職をしている人
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読書日:2015年11月
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