監督までこなせる脚本家。それは運だけでは到達出来ない境地
『三谷幸喜 創作を語る』三谷 幸喜 松野 大介著 書評
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『古畑任三郎』などの脚本家として有名な三谷幸喜さんが手掛ける作品は、舞台以外、ほとんど観ています。
最新作の映画『ギャラクシー街道』はレビュー評価があまりにも低いのでまだ観ていませんが・・・。
三谷さんの作品の印象は、当たり外れが激しいということ。実際、世間的にも評価の低い作品も少なくありません。
近年の私の一番のお気に入りは『清須会議』。そして、昨年フジテレビで2夜連続で放送された『オリエント急行殺人事件』も良かった。
一方、苦手な作品は『THE 有頂天ホテル』『ステキな金縛り』といったコテコテのコメディー物。
どうもあのノリにはついていけません。
それでも、新作が出たら観てしまうのは、三谷作品に対する期待感が強いのでしょう。
本書は、三谷さんが手掛けた作品群を振り返り、当時の制作エピソードを語る内容。
元タレントで今は小説やエッセーを書いている松野大介さんが、聞き手となり、インタビュー形式で書かれています。
デビュー時から映画『清須会議』あたりの期間の作品までが対象です。
三谷さんは自分のことを「不思議なくらい幸福で、本当に恵まれている」と語ります。
それは、脚本家をしながら、やりたい監督業も出来、しかも大ヒットした作品も少なくない。
さらに、他の仕事も出来て、本も出せてしまえるからとのこと。
確かに、映画は監督になるのに何十年もかかる世界ですから、恵まれているといえば大いに恵まれていますね。
しかし、本書を読んで、現在の三谷さんの境遇は決して、「単にラッキーだったから」ではないと感じました。
三谷さんは、ラスト近く、ご自身のことを下記のように語っています。
まあ、好きでやっていることだからね。
あとは僕は仕事の他にやることがないんですよ。
趣味もないし、芝居や映画を創る以外には何もやることがない。遊びの延長で、好きな物語を創っています。
三谷さんの仕事の経歴を振り返ってみると、本当にこのセリフ通りだなと思います。
それは、『古畑任三郎』のような大ヒット作品を生み出しても、それで胡坐をかくのではなく、次々と新たな試みにチャレンジしていることからわかります。
本書によると、「人形劇」や「文楽」、さらには私も気に入っている、1時間40分を何と1シーンで撮ったドラマ『大空港2013』など本当に様々な挑戦を続けているのです。
その中にはもちろん、失敗作もあるようですが、その心意気が多くの制作スタッフの心をつかみ、次々と実現させているのではないでしょうか。
もし、三谷さんがベンチャー企業の社長であったとしたら、現状に満足せず、次々と新たなサービスを生み出す有能な経営者だったであろうと感じさせます。
この前向きで様々な試みに挑もうとする姿勢が三谷さんの原動力になっているのでしょう。
他、創作のきっかけは子供のころの「人形遊び」であり、そのため群像劇を書くことが好きであると語るなど、個性的な三谷作品の原点なども知ることが出来ます。
クリエイティブなお仕事をされている方は、是非読んでいただきたいです。
三谷さんは、今の状況は続かず、やがて飽きられ、依頼も来なくなろうとも述べ、そうなったら、ゆったりしたスタンスで、自分が面白いと思うものを創りたいと述べています。
そんな三谷さんのコメントを読み、いつまでも三谷作品を鑑賞し続けたいと思いました。
こんな人におススメ!
・クリエイティブな仕事をしている人
・三谷幸喜ファンの人
・人気ドラマや映画の創作の裏側を知りたい人
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読書日:2015年11月
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