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どんなカルチャーにおいてもぬぐい切れない、日本人としてのアイデンティティが生まれる

『イチローと村上春樹は、いつビートルズを聴いたのか』西村 幸祐 杉原 志啓著 書評

 

『イチローと村上春樹は、いつビートルズを聴いたのか』西村 幸祐 杉原 志啓著

 

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著者の西村 幸祐さんはスポーツや政治などの評論家、杉原 志啓さんは音楽評論家です。

 

2人は団塊の世代にあたり、本書は戦後のサブカルチャーについて語り合う対話集となっています。

 

扱う分野は多岐にわたり、いずれも興味深く読むことが出来ました。各章のタイトルは下記の通り。

 

1.戦後史の中の村上春樹
2.『ビートルズの優しい夜』が予言したもの
3.スクリーンから時代を透視する
4.雑誌メディアの繁栄と衰退
5.「テレビ」という名の病
6.日本人はスポーツに何を見たか
7.アニメと漫画は「日本的」なものなのか

 

このように映画や文学、テレビに雑誌、音楽など様々なメディアや文化を対象に語り合っています。

 

中でも面白かったのは、メディア毎の隆盛について。

 

かっては映画が花形でしたが、やがて、テレビに移行し、テレビの影響力が大きくなっています。

 

さらに現状を鑑みると、今度はテレビが衰退に向かい、インターネットへと主役が移りつつあります。

 

時代の発展とともにメディアパワーは変化し、インターネット全盛期の時代が到来することになります。

 

また雑誌もかっては大きな影響力を持っていたんだなと改めて確認しました。

 

『ポパイ』なんて今はほとんど存在感がないですが、過去はアメリカ文化を紹介する強力な発信源でした。

 

もう一つ興味深かったのは、「ソフトパワーは国の力に比例する」という記述です。

 

事例として昔はヨーロッパ映画も入ってきたけれど、現在は全く影響力がなくなり、アメリカ映画中心になっているとのこと。

 

現在はそのアメリカもいよいよ国力が落ちてきているため、これからの映画界がどのように変化していくか注目です。

 

このように日本は様々なメディアで海外文化の影響を受けていますが、それでもそれを消化し、日本らしさを含む文化に変換してしまうという指摘を著者はしています。

 

例えばスポーツにおいても、日本のスポーツ界は、いまだに精神論が重視される風潮があるといった具合です。

 

カルチャーには各国のアイデンティティが組み込まれていて、国力によりその影響度は変化していく。

 

文化といえども、政治や経済などあらゆる要素と密接に関係しているということが理解出来ました。

 

こんな人におススメ!

・メディアの盛隆の確認をしたい人
・文化と国力が密接に関係している事実を知りたい人
・サブカルチャーに潜む日本人のアイデンティティを把握したい人

 

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読書日:2016年1月

 

『イチローと村上春樹は、いつビートルズを聴いたのか』西村 幸祐 杉原 志啓著

 

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