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自分が増殖し、やがては自分同士の殺し合いに…。日常が破壊されていくぶっとんだ展開

『俺俺』星野 智幸著 書評

 

『俺俺』星野 智幸著

 

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『俺俺』あらすじ

ことのきっかけは飲食店での些細な出来事であった。

 

家電量販店で働く“俺”(永野)は、ある日飲食店にて一人で食べていたが、隣にうるさい耳障りな客が居たため、席を移動する。

 

だが、その時、自分のトレイに見ず知らずの携帯電話が置いてあることに気付く。

 

その携帯電話はすぐ隣にいた耳障りな客のものだと分かったが、“俺”はむしゃくしゃしていた為、そのままポケットにその携帯電話をしまってしまう。

 

その後、携帯電話の持ち主の母から電話が来るのだが、“俺”は声マネをしてオレオレ詐欺を働く。

 

こうして、なりゆきでオレオレ詐欺を働いたその日から“俺”の世界に狂いが生じ始めるのであった。

 

始めは携帯電話の持ち主の母が突然“俺”の家に来て“俺”のことを大樹という携帯電話の持ち主だと思っていて、大樹の母が持ってきたアルバムにはなぜか自分が写っているという出来事であった。

 

そして、どうもおかしいと思った“俺”はすぐに実家へと向かうが、そこには別の“俺”がいた。

 

その後、実家の“俺”から連絡が来て、“俺”同士で集まる計画を立てる。

 

そして、家電量販店で働く“俺”、実家にいて公務員の“俺”、大学生の“俺”が集まり、心地よい楽園、即ち自分だけのユートピアを築き上げるのであった。

 

しかしそれは長くは続かず、やがて“俺”同士の殺し合いへと発展してゆく。

 

wikipediaより

『俺俺』書評

主人公の永野は、マクドナルドで、隣に座っていた人が持っていた携帯電話を偶然手に入れてしまう。

 

そしてその人の母親と思われる人から電話がかかり、その人の息子を装ううちに、物事はあらぬ方向に展開していく…。

 

こんな些細な出来事がこの物語のスタート。

 

その後、自分が増殖し始め、最終的には、増殖した自分同士のサバイバル殺戮戦が、高尾山で繰り広げられる。

 

ストーリーの飛躍の仕方にとても驚かされる作品です。

 

元々私は「先の読めない物語」が好きなので、本作品はお気に入りの部類。

 

しかしそんな私でも、「俺」が増え続け、「俺」だらけの街になっていく展開に多少混乱してしまうほど。

 

あまりの劇的展開についていけない人もいるのではないでしょうか。

 

作者の星野智幸さんの作品を読むのは本作が初めてですが、相当な才能の持ち主なのでは。

 

なかなか他の人では書けない発想力です。

 

一般的に物語は「訴えかけるメッセージ」が備わっているものですが、この物語はそんなことも忘れさせてくれる、「単純に物語を楽しむ」パワーに満ち溢れています。

 

とにかく面白い小説を読みたい!と考えている人には、是非、手に取って頂きたいです。

 

こんなぶっ飛び方をした物語を今まで読んだことがありません。

 

こんな人におススメ!

・複数の人物による「1人称」の物語を読みたい人
・奥田英朗作品が好きな人
・牛丼が好きな人

 

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読書日:2016年2月

 

『俺俺』星野 智幸著

 

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