「女性の喪失」をモチーフにしたリアリティある短編集
『女のいない男たち』村上春樹著 書評
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村上春樹さんの作品は高校時代に初めて出会い、以来同じ作品でも何度も読み返すくらい好きになりました。
春樹さんの作品の評価は賛否が別れますが、私にとっては単純に物語としても面白いし、自分の心の中を掘り進む感覚があり、最も好きな作家の1人です。
新作の物語が出ると同時に購入し、読んでいます。
また海外に行くとたいてい春樹さんの本は人気で、国を超えた普遍性のようなものが存在するのではという感じもします。
本書は9年ぶりの短編小説ということで2014年4月に発売されました。
前作の短編集『東京奇譚集』や『神の子どもたちはみな踊る』はどちらかというと現実離れしたファンタジー要素の入った作品でしたが、それに比べるとリアリティがあり、私としてはこちらの方がすんなり入りやすく、共感もしやすかったです。
全編を通して、「女性の喪失」をモチーフにした物語が綴られていますが、このモチーフは長編『ねじまき鳥クロニクル』の冒頭にもみられるように春樹さんが好んで起用するシチュエーションです。
まるで画家が同じモチーフの作品をたくさん描くようようなイメージで、春樹さんのアーティスティックな側面を感じるのです。
「春樹さんは同じような作品が多い」という声も聞かれますが、これは画家が同じモチーフの作品を多く発表しているのと同じようなものなのではないでしょうか。
春樹さんの文章にはリズム感があり、流れながら読み進むことが出来ます。
今回、掲載順序も発表順と少し異なっているのですが、これも音楽好きな春樹さんが全体の流れを意識して順序を組み替えたのかもしれません。
私にとって春樹さんの作品を読むことは、生きるための大切な養分を吸収する時間を確保するような感覚になっています。
こんな人におススメ!
・村上春樹さんの最新の短編集を読みたい人(2015年時点)
・村上春樹作品によく出てくる「女性の喪失」を読んでみたい人
・春樹さんの短編の作り方を知りたい人(前書きにて解説)
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読書日:2014年4月
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