読書の楽しさを伝えるための日々の記録

トップページ【評価順】社会の本> 【読書感想】『失職女子。』大和 彩

日本のセーフティネットの危うさを実感

『失職女子。』大和 彩著 書評

 

『失職女子。』大和 彩著

 

 

スポンサーリンク

 

サブタイトルは、「私がリストラされてから、生活保護を受給するまで」。このとおりの内容の本です。

 

著者の大和彩さんは、大学卒業後に会社に勤務するも、倒産や契約終了、リストラなどで次々と職を失い、現在は生活保護を受給して生活されています。

 

本書は、社会人になってから生活保護を受けるまでの波乱万丈の経緯が書かれており、軽いタッチでユーモアを交えた文章なのですが、内容自体はとても重いです。

 

大和さんが大きなハンデになっているのは、幼い時から両親に虐待めいたことを受け続けていること。

 

それは社会人になっても変わらず、母親が自分の通帳からお金を全額引き出そうとしたり、驚くような仕打ちを受けているのです。

 

両親から愛情を受けていないということは、大きな痛手になっているということがわかります。

 

大和さんはリストラなどに会ったあともハローワークに通い続けるのですが、35歳を過ぎたとたん、全く採用をもらえなくなってしまったそうです。

 

100社以上の企業に落ち続けたというから驚きです。

 

そうするうちに家賃が払えなくなり、「借金・風俗勤務・自死」が頭に思い浮かぶように。

 

そんな中でも、ハローワークや役所で親切な担当に恵まれ、生活保護を受ける決意をしていきます。

 

「生活保護」について、その実態を知ることはあまりなかったのですが、本書を読んで、日本のセーフティーネットの危うさを感じざるをえませんでした。

 

本書によると、生活保護を受給できる所得基準以下の人のうち、実際に生活保護を利用している人の割合は、フランスでは91.6%、ドイツでは64.6%なのに対し、日本では20%なのだとか。

 

テレビなどで、役所が「水際作戦」として、生活保護の対象から外れるよう、あの手この手を使ってくるということを知っていましたが、この数字を出されると、日本は本当に人権を尊重されているのだろうかと思ってしまいます。

 

そして最近は舛添都知事が、外遊に多額のお金をかけていることが問題になっていますが、「お金の使い方そこじゃないだろ!」と怒りさえ感じてしまいます。

 

まだまだ人々が落ち着いて安定した生活を送れる社会にはなっていないんだなと痛感しました。

 

同時に普段の日々の生活がどれほど有り難いことだったのか、そして困った人が目の前にいた時に、自分は親切に対応出来るのだろうかということをふと思いました。

 

こんな人におススメ!

・生活保護受給について知りたい人
・日本のセーフティーネットの現状を学びたい人
・日々の生活の有難みを実感したい人

 

スポンサーリンク

 

読書日:2016年5月

 

『失職女子。』大和 彩著