解離性同一性障害を素材に見事にメロドラマとして消化
『プリズム』あらすじ
「僕は、実際には存在しない男なんです」世田谷に古い洋館を構えるある家に、家庭教師として通うことになった聡子。
ある日、聡子の前に、屋敷の離れに住む謎の青年が現れる。
青年はときに攻撃的で荒々しい言葉を吐き、ときに女たらしのように馴れ馴れしくキスを迫り、ときに男らしく紳士的に振る舞った。
激しく変化する青年の態度に困惑しながらも、聡子はいつして彼に惹かれていく。
しかし彼の哀しい秘密を知った聡子は、結ばれざる運命に翻弄され―。
『プリズム』書評
著者は『永遠の0』や『海賊とよばれた男』が代表作の百田 尚樹さん。
『永遠の0』を以前読んだことがあり、ストーリーの組み立て方がとても素晴らしく、他の作品も読んでみたいと思い、手に取った次第です。
この物語は「解離性同一性障害」を扱っています。
どんな障害がわからないという方は、旧名「多重人格障害」と聞けばご理解頂けるでしょう。
本書の巻末には参考文献として、「解離性同一性障害」関連の著書がびっしりと紹介されており、百田さんもかなり勉強されたことが伺えます。
一見、難しそうな題材かと思いますが、この題材を見事に壮大なラブストーリーに仕上げており、作家としてのスキルは相当なものだと思いました。
さすがに中盤は中だるみを感じた部分もありましたが、ラストに向けてどんどんと盛り上がりをみせていきます。
ストーリーの概略としては、家庭教師で主婦である聡子が、依頼先の家に行ったときに、解離性同一性障害を持った人物と出会い、その中の人格の一つに恋をしてしまうというもの。
そして、その人物がカウンセリング治療を受ける過程で、各人格が統合され、聡子が好きだった人格も最終的に統合され、この世から消えてしまうのです。
好きな人との別れというのはとても切ないものですが、この世なから消滅してしまうというのは、聡子にとってはとてつもなく苦しく、切ないものであろうなあと・・・。胸が痛みました。
このあたりの心情の揺らぎを描くのが百田さんはとても上手ですね。
とても読み応えがあり、感動しました。
こんな人におススメ!
・変わった形のラブストーリーを読みたい人
・解離性同一性障害について学びたい人
・「永遠の0」に感動した人
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読書日:2016年8月
サイト管理人の評価
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