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日本人ならば知っておくべきマッカーサーと昭和天皇の11回の会談

『マッカーサーと日本占領』半藤 一利著 書評

 

『マッカーサーと日本占領』半藤 一利著

 

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著者の半藤一利さんは、作家で自称、「歴史探偵」。

 

『昭和史』『決定版 日本のいちばん長い日』『幕末史』など多くの著書を書かれ、私もよく半藤さんの本を読んでいます。

 

本書はタイトル通り、太平洋戦争後のGHQ占領下の日本について書かれており、特にマッカーサー、そして昭和天皇に関する記述が中心になっています。

 

目次は次の通り。

 

第1話 「青い眼の大君」の日々
第2話 昭和天皇の゛戦い”
第3話 十一回の会談・秘話
第4話 「ヒロヒトを吊るせ」
第5話 「本間は断罪されねばならぬ」

 

まず、最初にマッカーサーについての人柄などが詳しく書かれています。将来的に大統領の就任を狙っていたことは驚きでした。

 

また、日露戦争直後に日本に赴き、戦勝の喜びに沸き、興奮する日本を見たことや、大山巌・黒木為驕E乃木希典・東郷平八郎ら日露戦争を戦ったトップクラスの軍人に会った経験がマッカーサーにあったことをはじめて知りました。

 

そして、マッカーサーの人柄については次の文章が一番印象に残りました。在任中は一度も日本を旅行しなかったそうです。

 

東京に進駐し第一生命ビルに連合国軍総司令部(GHQ)の旗をひらめかしてからも、マッカーサーの日常は、かって戦場においてたてた日課と、まったく同じように厳守されていた。

 

朝遅く起きてゆっくり朝食をとり、しばらく書類に眼をとおしてから、午前十一時に宿舎のアメリカ大使館をでてGHQに向かう。

 

午後二時まで働き、昼食のため大使館に戻り、昼食と昼寝ののち、午後四時すぎにまたGHQに戻って午後九時ころまで仕事をし、そして大使館に帰る。

 

規律正しい軍人らしく、かれはこのスケジュールをまったく変えようとはしかなった。(186ページ)

 

また、本書のハイライトの一つは昭和天皇の戦争責任についてでしょう。

 

戦後、アメリカの世論として、1945年のギャラップ調査で、天皇の身柄については、下記のような意見が出ていたそうです。(112ページ)

 

処刑せよ 33%
裁判にかける 17%
終身刑とする 11%
外国へ追放する 9%
そのまま存続 4%
操り人形に利用 3%
無回答 23%

 

このような状況の中で無傷で天皇制を存続出来たのは奇跡に近く、それはマッカーサーが天皇と初めて対面した時に、天皇が語った次の言葉により、マッカーサーが衝撃と深い感銘を受けたからでした。

 

あなたが私をどのようにしようともかまわない。私はそれを受け入れる。私を絞首刑にしてもかまわない。(131ページ)

 

保身を顧みず、日本国民の存命を第一に考えて発したこの発言が、天皇制の運命を決めたといってよいでしょう。

 

一歩間違えばこの時に連錦と続いていた天皇制が途絶えていた可能性も十分あるのです。

 

そして、マッカーサー以外の人が就任していればまた、歴史も全然異なっていたでしょう。

 

本書ではさらに、極秘扱いされていた天皇とマッカーサーの計11回の会談について、それぞれどのような会話がなされたかの推測もされています。

 

この部分は日本人であれば是非、知っておきたい所だと感じました。

 

全体的に総花的で浅めの内容ではありましたが、この時代の動向について強く興味を持った一冊となりました。

 

こんな人におススメ!

・QHG占領下の日本について詳しく知りたい人
・天皇の戦争責任が回避された課程を知りたい人
・マッカーサーの人柄に触れたい人

 

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読書日:2016年9月

 

『マッカーサーと日本占領』半藤 一利著

 

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