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他人事ではない、日常に潜む暗転

『冤罪 ある日、私は犯人にされた』菅家 利和著 書評

 

『冤罪 ある日、私は犯人にされた』菅家 利和著

 

 

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本書は、1990年5月に幼女が殺された「足利事件」において、殺していないにも関わらず警察から犯人に仕立て上げられ、一旦は無期懲役刑を言い渡されたものの、2009年6月に無罪と認められて釈放された菅家利和さんの独白です。

 

菅家さんは実に17年もの間、服役し、人生を大きく狂わされたのです。

 

菅家さんが冤罪とわかり、釈放されたことは、ニュースで大きく取り上げられたそうですが、当時の記憶は私は残念ながら既になくなっていました。

 

「冤罪」と聞くと、周防正行監督の映画「それでもボクはやってない」を思い出し、とてもリアルで生々しい話だったので、本書を見つけた時に、そのことを思い出し、思わず手に取り読みました。

 

本書の目次は次の通りです。

 

1:逮捕
2:孤立
3:出自
4:内偵
5:闘争
6:獄中
7:自由

 

なぜ、罪を犯していない菅家さんが逮捕され、無期懲役刑にまで到ったのか?

 

それは結果的には間違っていたDNA鑑定で、殺された幼女に付着していた精液と一致し、さらには警察の有無を言わせぬ、極めて強引な取り調べがあったからです。

 

警察の恐ろしい強引に対し、菅家さんの心は折れ、やがて警察が喜ぶような自白を勝手に作り上げるようになりました。

 

警察の意に沿った話をすると、警察の対応が穏やかになるのです。

 

そこままいけば、菅家さんは間違いなく死ぬまで檻の中だったのですが、菅家さんに何のゆかりもなかった西巻さんという方が、報道を見て、「この人は無実だ!」と感じ、活動を開始します。

 

この出会いがなければ、最後まで菅家さんは犯人扱いされていたであろうと思うと、とても恐ろしいです。

 

そして、さらに恐怖と怒りを感じたのが、警察の対応と頭から菅家さんを犯人と決めつける、やる気のない国選弁護士。

 

弁護士については、西巻さんが探してきた私選弁護士が奮闘し、無罪を証明してくれるのですが、人の人生をあまりにも軽んじる彼らの態度にやりきれない思いがします。

 

この事件は菅家さんが犯人にされましたが、この体質が変わらないと第2、第3の冤罪が起こる可能性は十分にあると考えられます。

 

何もしなくても収入が入ってくる「公務員」という職業が、ここまで人間を堕落させてしまったのでしょうか。

 

けっして他人事ではなく、自分にも起こりうる出来事。

 

そんなことを痛感しました。

 

こんな人におススメ!

・冤罪について深く学びたい人
・警察や国選弁護士の怠惰な態度を知りたい人
・人生を激変された人の辛さを知りたい人

 

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読書日:2016年11月

 

『冤罪 ある日、私は犯人にされた』菅家 利和著