日米開戦が避けられなくなった理由にせまる
『日米開戦の悲劇』福井雄三著 書評
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「勝つ見込みの薄かった日米開戦になぜ至ったのか?」という疑問に対し、当時の駐日大使であったジョセフ・グルーを軸に書く歴史書。
ジョセフ・グルーという人物は今回初めて知り、また、日本の良さを理解し、深い愛情を抱いていたことは意外でした。
それでも戦争を避けられなかったというのは歴史の宿命のようなものを感じてしまいます。
本書を読むと、アメリカとの交渉の対面に立っていた野村側がギリギリまで戦争を避けようとしていたことがわかります。
また、最後まで戦争回避の意向を強く持っていた昭和天皇のお姿は尊敬の念を持ってしまいます。「非戦」というのは天皇家で脈々を受け継がれている理念となっている気がします。
最後は日本はアメリカ側の条件をほぼ飲む形になりますが、それでもハルが交渉担当となっているアメリカは拒否する。そこに中国国民党の蒋介石の意向が働いていたことを初めて知りました。
つまりどんなに譲歩をしても戦争は避けられないように仕向けられていたというわけです。
本書では開戦に至るまでの経過を詳しく説明してくれ、新しく知った事実も多かったです。
そして、特に印象に残ったのは連動艦隊司令長官山本五十六氏の存在。
山本五十六といえば、「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ」という有名な言葉があるように、強烈なリーダーシップを発揮した人という良いイメージを持っていたのですが、本書を読んでその印象は見事に崩れてしまいました。
山本五十六は戦時中、前線に立つことなく、安全な場所にいて、バクチ三昧だったとのこと。バクチが三度の飯より好きだったそうです。そして、ミッドウェー海戦の大敗北につながるのです。
著書は山本五十六の無能ぶりをこき下ろし、日本自身が裁判を行えば、海軍の罪は非常に重いという判断であっただろうと述べています。
海軍といえば、日露戦争の名将東郷平八郎を思い出します。彼は日本海海戦において船の艦橋で指揮をとっていましたが、その時の状況と大いに異なっています。
このような人物がなぜ海軍組織のトップに立っているのかが疑問です。
現代社会でも「トップが無能」という状況は少なくなく、不思議です。そして、トップが無能であると組織の全員が悲惨な状況に陥ってしまう。「組織」の不可解な側面に思い至ります。
こんな人におススメ!
・勝つ見込みの薄い日米開戦に至った理由を知りたい人
・軍国日本において、日本に愛情を抱いていたジョセフ・グルーについて知りたい人
・山本五十六の実情を知りたい人
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読書日:2015年8月
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