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グローバル企業のトップから見える日本の危機
『現実を視よ』柳井 正著 書評
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家電メーカーを中心に世界市場で低迷している日本企業が増えている中、ファーストリテイリングは今もなお成長を続けている国内では数少ないグローバル企業となっています。
そんなグローバル企業トップの立場から今の日本を見ると、歯がゆくて仕方がないのでしょう。
本書では多少の偏見は感じつつも、柳井さんだからこそ伝えられる厳しくも愛のこもった日本論になっています。
柳井さんから見える日本。
それは、世界2位の経済大国の座を中国に奪われ、国家財政が火の車になっていても過去の成功体験にとらわれて変化を嫌う「茹でガエル現象」に陥っている現実です。
そして、「この体質は太平洋戦争の敗戦もバブル期以降の衰退も本質は同じである」という名著『失敗の本質』の著者野中郁次郎さんの言葉を引用しています。
確かにこれは私も同意するところです。
日本では何か失敗や事故などが起こった時にその責任の所在をウヤムヤにしてしまうことがとても多いと感じます。
このような無責任体質が、失敗から目をそらし、そのままズルズルと後戻り出来ない所まで行ってしまうということなのでしょう。
日本人の悪しき遺伝子なのかもしれません。
また、世界でビジネスをしている柳井さんだからこそわかる厳しい現実を著書では多く挙げています。
・日本人は自分のことをまあまあ金持ちだと思っているのかもしれないが、20年前に金持ちだった日本は、今ではせいぜい「中の下」にすぎない
・「日本人は頭がいい」は過去の話。どの国も経済が発展するにつれ、教育水準はどんどん高くなっている
・先進国と新興国の「情報格差」はなくなってきている
という具合です。
さらに、柳井さんは政治に対しても手厳しく論じています。
刊行当時(2012年10月)はまだ民主党政権時代で経済の低迷も極まっていた時期であったので相当なストレスがあったのだろうと推測します。
三流どころか四流とさえ述べており、その危機感は相当なものだったのでしょう。
一方、橋下徹さんのリーダーシップを高く評価しており、ある程度しっかりした政治観の持ち主なのではと感じます。
このように厳しい主張を繰り返す柳井さんですが、最終章は日本への愛情、そして希望を託す内容になっています。
2030年世界のあらゆる場所で日本人は多いに活躍するというビジョンを掲げています。
当事者意識を持ち、自分が何ができるかを考え、実行に移すことが大切であると述べるのです。
日本は暮らしやすく安全で親切な人が多いのも事実です。それは日本の素晴らしい資産であるといえるでしょう。
一方でだからこそ見えてこないグローバル市場で相対的に低下する日本の姿もあるのだと思います。
現状に満足することなく、しっかりと世界を見据えることが大切なのではないでしょうか。
こんな人におススメ!
・グローバル企業のトップから日本がどのように見えるかを知りたい人
・これからビジネスで勝ち抜くためにどのようなことを心がければ良いかを知りたい人
・日本の政治がもたらす課題を知りたい人
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読書日:2014年11月
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