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シンクロからみる日中スポーツ比較
『教える力―私はなぜ中国チームのコーチになったのか』井村雅代著 書評
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井村雅代さんは、シンクロナイズド・スイミングがオリンピックの正式種目になった1984年のロサンゼルス五輪から、2012年のロンドン五輪まで、日本代表コーチとして6回、中国ヘッド・コーチで2回、連続8回すべてのオリンピックでメダル獲得という、輝かしい成績を残した名コーチとして知られています。
特に、2006年に井村さんが中国のヘッドコーチに招かれて海を渡ると、世界7位だった中国チームがすぐに北京五輪で銅、ロンドン五輪で銀と銅という抜きんでた結果をおさめることになりました。
本書ではご自身の体験談やコーチ論を語られており、シンクロ界がどのような状況になっているのかを知ることが出来ます。
とりわけ私が注目したのが日本と中国のスポーツに対する比較を井村さんが語っていることでした。
特に、井村さんが中国にコーチとして渡ってから、日本側の協会からは国賊と呼ばれるなどひどい仕打ちを受けたようです。
村社会というか日本人の悪い体質が出てしまっている気がします。
特に、年齢を理由に日本のコーチに再度就任することを断られることなど、日本のスポーツ組織は全般的にやはり閉鎖的で選手のことを考えて行動していないのではないかと感じてしまいます。
井村さんは中国のスポーツの取り組みの利点として、「下の人への託し方」を挙げています。
それは運営組織がコーチの一切を井村さんに任せ、井村さんが信頼されていると感じ、気持ちよく業務に邁進出来ているからであると述べています。
これが日本になると運営組織から細かい横槍が入るということなのでしょう。結果を残した後の祝福の仕方もすごく手厚いそうです。
また中国では男女の区別なく、はっきり言った者勝ちだが、日本は女性を下に見ることからスタートするとも。
国民性の違いなのでしょう。
一方、日本の利点としては「辛抱強くやってくれる」ことを挙げています。中国の選手よりもはるかに聞く耳を持っているのだとか。
やることの意義をきちんと伝えることの大切さを訴えています。
一方、マイナス面としては閉鎖的で「井の中の蛙、大海を知らず」という気質があるのだとか。
これは島国であり、国内で十分に完結出来てしまう環境がそうさせてしまっているのかもしれません。
今、ますます海外との交流が増えています。そのような中で我々日本人は偏見を持つことなく、フラットな状態でもっと海外に行ってみて交流を深めていくべきだと思います。
もともと閉鎖的な気質があるということは頭に入れておいた方が良いでしょうね。
最後に、大阪市長の橋下徹に関する記述がありました。
橋本さんには良いイメージを持っていたのですが、マスコミの前になると態度が豹変したというエピソードが書かれ、少しその人間性の見方が変わりました。
こんな人におススメ!
・スポーツの観点から日本と中国の比較論を読みたい人
・シンクロナイズドスイミング界の状況を知りたい人
・指導者として適切なヒントを得たい人
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読書日:2015年8月
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