組織が変容する姿を生々しく書いた貴重な資料
『オウム事件 17年目の告白』上祐 史浩著 書評
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オウム真理教事件実行犯の1人として、警察庁に特別指名手配被疑者に指定されていた平田信容疑者が2011年の大晦日に突如出頭して来たニュースは今も覚えています。
そして2012年6月に菊池直子、高橋克也の逮捕によりオウムの逃亡犯全員が逮捕されるに至りました。
本書はこのことを一つの区切りとして、上祐史浩がオウム時代から脱会後の今日に至るまでの経緯を書ききった内容となっています。
また、特別検証としてジャーナリストの有田芳生との対談を行っています。
オウム入信からオウムの暴走、教団内部の状況や男女関係などかなり生々しく当時の状況が書かれています。
特に注目すべきはオウムが犯罪を行うまでに組織が変容していく過程です。
麻原が海外の高僧によって権威付けされ、その後犯罪を正当化する教えを説いていく。
教団の弟子達はハルマゲドンを信じていくようになります。
閉鎖空間で行われるプロパガンダ。そして、洗脳されてしまう教団員達。
権力を握るものがいとも簡単に構成員を操ってしまうというのは恐怖を感じます。
極限状態というのは偏った思想でさえも受け入れてしまい、客観的な判断が出来ない状況になりえてしまう。
環境とはかくも恐ろしいもので、世に出ている様々な事件はこのような極限状態で自制的な判断が出来なくなってしまったために起こってしまうものなのでしょう。
現在、上祐は自ら設立した「ひかりの輪」の代表をしています。
そして、オウムの継承団体、「アレフ」との違いも述べています。
最後に現在は内観に力を入れ、両親への感謝への想いに帰結していると述べる上祐。
どうしてもどこまで本心で書いたものなのか疑いたくなってしまいますが、本心であるとするならば、この最終的に「両親への感謝」に至る変化というのはとても印象深いものです。
こんな人におススメ!
・組織が凶暴化していく過程を知りたい人
・オウム事件の内情をリアルに知りたい人
・現在の上祐 史浩の心境を知りたい人
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読書日:2015年12月
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