ゴツゴツしていて情念がわき上がる。読みにくいが心に残る
『共喰い』あらすじ
17歳の遠馬は、怪しげな仕事をしている父とその愛人・琴子さんの三人で川辺の町に暮らしていた。
別れた母も近くに住んでおり、川で釣ったウナギを母にさばいてもらう距離にいる。
日常的に父の乱暴な性交場面を目の当たりにして、嫌悪感を募らせながらも、自分にも父の血が流れていることを感じている。
同じ学校の会田千種と覚えたばかりの性交にのめりこんでいくが、父と同じ暴力的なセックスを試そうとしてケンカをしてしまう。
一方、台風が近づき、町が水にのまれる中、父との子を身ごもったまま逃げるように愛人は家を出てしまった。
怒った父は、遠馬と仲直りをしようと森の中で遠馬を待つ千種のもとに忍び寄っていく....。
※アマゾンより
『共喰い』書評
芥川賞受賞作品。文面から情念がほとばしり出て、段落分けなどもされておらず、読みにくい。おそらく、作者のは読み手への配慮はさほど気にしていないのでしょう。それでいながら、読み終えると心に何かひっかかりのようなものが残る、何とも奇妙な作品です。
全体から感じられる、末期的な停滞感は田中さんが生まれ育った山口県の情景に起因しているのかなとも感じます。
東京からは感じ取れない、もう一つの日本の姿があるのではないでしょうか。
暴力と激しい性描写、性格のねじ曲がった人々...。
そして、ラストでは猟奇的な出来事が起こります。
田中さんの作品は読み手を選ぶものになるでしょう。読みやすさを求める方にとっては、とても違和感を感じると思います。
村上春樹さんとは真逆の感性の持ち主の印象です。
しかし、読後、心にずっとその印象が残ることも確か。それは、読みやすいだけの物語では出来ないことです。
異質な物語ではあると思いますが、それが良いのでしょう。
こんな人におススメ!
・読みにくいけど心に残る文学を読みたい人
・芥川賞受賞作品を読みたい人
・情念が感じられる物語を読みたい人
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読書日:2015年11月
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