読書の楽しさを伝えるための日々の記録

トップページ【評価順】漫画・関連本> 【読書感想】『ほんまにオレはアホやろか』水木 しげる

妖怪に導かれた水木サンの数奇な半生

『ほんまにオレはアホやろか』水木 しげる著 書評

 

『ほんまにオレはアホやろか』水木 しげる著

 

サイト管理人の評価

 

スポンサーリンク

 

本書をちょうど読もうとした時、水木さんの訃報を知り、運命的なものを感じました。

 

『ゲゲゲの鬼太郎』がヒットするまでの半生が書かれていますが、妖怪に導かれたのではとさえ感じる数奇な運命です。

 

皆さんは、水木しげるが提唱する、「幸せになるための7つの法則」というものをご存知でしょうか?

 

それは、下記の内容になっています。

 

1.「成功や栄誉や勝ち負けを目的に、ことを行ってはならない。」
2.「しないでいられないことをし続けなさい。」
3.「他人との比較ではない、あくまで自分の楽しさを追及すべし。」
4.「好きの力を信じる。」
5.「才能と収入は別、努力は人を裏切ると心得よ。」
6.「怠け者になりなさい。」
7.「目に見えない世界を信じる。」

 

例えば、「怠け者になりなさい。」などけっこう独特。

 

しかし、水木さんの半生を知ると、このような人生を送ったからこそ、独特の哲学が完成したんだなということがよくわかるのです。

 

水木さんの人生。それは、苦労の連続でした。

 

元々、水木しげるさんは子供のころから落第生であり、寝るのが大好きで寝坊ばかり。

 

「こいつは、アホとちゃうか」といわれていたそうです。

 

戦争が始まり、召集令状が届き、戦地に送られても、ダメ兵士扱いされる始末。そして、捨て駒として最前線に送られることに。

 

このような状況において、腕を一本なくしながらも、生き延びられたというのは、妖怪に守られていたのではと感じられるほどの奇跡であったことが理解出来ます。

 

しかし、その後も苦難と困窮の連続。美術学校に通いながら、紙芝居作家となるも、テレビの台頭で紙芝居は凋落、次に手掛けた貸本作家もうまくいかず。

 

この、紙芝居作家の時に既に「鬼太郎」は描かれており、「鬼太郎」のデビューは紙芝居であったことがわかりました。

 

それからも目が出ない日々が続きます。

 

40歳近くになり、お見合いをして結婚。当時、困窮した生活を共に過ごした奥さんは凄いとしかいえません。

 

奥さんの下着なども全て質屋に持っていかれたというから相当なもの。

 

現代であれば、奥さん側は速攻離婚してもおかしくないのでは。

 

水木さんは本当に良い奥さんと巡り合えたと感じます。

 

鬼太郎がやっとヒットしたのは40歳を過ぎてから。遅咲きであり、直前まで毎日の生活もままならない状況。

 

売れだしてからは、質屋に預けていたモノが次々と戻ってくるようになったとのことで、人気稼業で「売れる」ということはこういうことなんだなと感じました。

 

しかし、『アンパンマン』のやなせたかしさんもそうですが、ロングセラー作品を生み出す背景には、常人では耐えられないような苦労を長年続けている経験がある気がします。

 

2人とも超遅咲きですが、苦しみの中でも自分の信念を曲げない過程で形成された価値観というのは、作品を生み出すうえでかけがえのない宝となり、深みのある作品を生み出せる土台になりうるのではないでしょうか。

 

本書の最後で水木さんは、戦時中にお世話になった南の島に行き、原住民である島民達との再会を果たします。

 

そこでは文明のない生活が続いており、必要最低限の仕事しかせず、毎日を楽しく過ごしている。

 

水木さんはこんな生活こそ正しい姿であり、アクセク働く今の世の中はどこか間違っているのではないかと語っています。

 

私たちは今の生活に溶け込み、何の疑問もなく過ごしていますが、確かに、ふと考えると「こんなに働く必要もないんじゃないかな」とも考えてしまう自分がいます。

 

水木しげるさんの作品が世代を超え、愛され続けている理由は、ご自身の人生の中から生まれたかけがえのない価値観にあるということが実感できました。

 

こんな人におススメ!

・水木しげるさんの数奇な半生を知りたい人
・水木しげるさんの哲学の根元の体験を知りたい人
・自分の生き方を貫く大切さを感じたい人

 

スポンサーリンク

 

読書日:2015年12月

 

『ほんまにオレはアホやろか』水木 しげる著

 

サイト管理人の評価