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時代性を捉える力は圧倒的!林真理子さんの作品は次元が違う

『下流の宴』林 真理子著 書評

 

『下流の宴』林 真理子著

 

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『下流の宴』あらすじ

普通に教育を受けて、平穏な家庭で成長した主婦・由美子。

 

しかしその息子は中学校までの義務教育を修了しながら、定職に就かず、格差社会に悩んでいる。

 

そんな息子が突如、結婚相手を連れてきた。しかし、由美子からみたらその娘はとても「下品」な人物。

 

由美子は、息子の結婚を阻止しようと悩むようになる。

『下流の宴』書評

林真理子さんの作品は、『葡萄が目にしみる』や『コスメティック』など代表作は、都度読んでいましたが、ここ何年かはずっとご無沙汰でした。

 

本当に久しぶりに林真理子さんの作品を読みました。

 

最近は物語づいてきて、たくさんの小説を読んでいますが、その中でも群を抜いて巧い。レベルが違うという印象。

 

さすが、長年第一線で活躍し続けている作家さんだと感じ入りました。

 

とりわけ素晴らしいと感じたのは、今の時代を的確に捉え、さらりと軽妙に、自然体で描写しているところ。

 

例えば漫画喫茶のシーンなどがあるのですが、若者の文化を実にリアルにうまく捉えています。

 

時代の空気というものにアンテナをしっかりと張り続ける努力をされているんでしょうね。

 

一般的にベテラン作家になると、時代性を追うのは年齢的に厳しくなるのではないでしょうか。

 

この作品のテーマは「格差」。あらゆる階層の人々が登場し、妬みやプライドが渦巻いていきます。

 

主人公である教育ママ、由美子は手塩をかけて、息子を育てますが、高校中退でやる気ゼロ。

 

教育熱心だった由美子は絶望の淵にたたされるのです。

 

このようなシチュエーションは現実にもけっこうあると思います。

 

子供は親の期待通りには育たないもの。それだけに、共感する読者も多いのではないでしょうか。

 

ラストは救いの要素があり、学歴やお金、容姿などよりも大切なものがあるということについて、考えさせてくれます。

 

様々な欲望により、現代社会はこのような縮図になっているのだとうならせてくれました。

 

ストーリー展開も見事で最後まで一気に読めてしまいます。

 

これは、感性や才能というものなのでしょうか。

 

とにかく、あらゆる点で群を抜いたレベルの作品だと思いました。

 

こんな人におススメ!

・今の時代をうまく捉えた物語を読みたい人
・単純に面白い小説を読みたい人
・人間にとって、本当に大切なことについて考えてみたい人

 

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読書日:2016年3月

 

『下流の宴』林 真理子著

 

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