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本当に些細なことがきっかけで、人間は犯罪に手を染めてしまうものである

『転落の記』本間 龍著 書評

 

『転落の記』本間 龍著

 

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本書には「私が起こした詐欺事件、その罪と罰」という副題が付けられています。

 

著者の本間龍さんは、元々は、大手広告代理店博報堂に勤めていたいたって普通のサラリーマンでした。

 

しかしあることがきっけで詐欺行為に手を染め、その詐欺が明るみに出てしまい、逮捕。

 

有罪となり、1年間の服役を行いました。

 

その間奥さんとは離婚し、博報堂は退職しています。

 

一介のサラリーマンで、仲の良い家庭を持っていた人物の人生が、暗転してしまった経緯を淡々を書いています。

 

さきほど書いた、詐欺事件を起こした「あるきっかけ」というのは、担当していたクライアントからの広告費が未回収だったことから始まります。

 

その額は1,000万円程度であり、クライアントはどうしてもお金を払ってくれない。

 

会社の上層部から詰められ、せっぱつまって取ってしまった行動が、博報堂の未公開株の話を友人に持ち出し、友人からお金を得、そのお金を「クライアント側からの支払い」と偽り、会社に入金してしまったのです。

 

これで味を占めてしまった著者は、当時、浮気相手であった女性との交際費欲しさに、他の友人からも同様の手口でお金を引っ張り、さらには闇金に借金をするまでになってしまいます。

 

その後博報堂は株式公開をし、当然詐欺行為は発覚することになり、逮捕ということに至るのです。

 

もちろん巨悪な犯罪行為ですが、犯罪に手を染めたきっかけが、ほんとうに小さなきっかけであったことにゾッとします。

 

実は、私は、裁判の傍聴に何度か行ったことがあるのですが、傍聴していると、犯罪を起こしたきっかけが、このように些細なことであったということは驚くほど多かったです。

 

つまり、「自分は犯罪なんか起こさない」と思っていても、何がきっかけでダークサイドに引き込まれるかわかったものではないというわけです。

 

また著者は逮捕後、深い反省の念にかられるのですが、その後の周囲の人々の変化というのも興味深いものでした。

 

浮気相手や奥さんは一切連絡を絶ち、博報堂の仲間だった人々も面会に来ない。

 

そんな中、親身になって心配してくれた博報堂のある先輩の優しさは、とても心に染みたそうです。

 

もし周囲の人で同様に犯罪を起こしてしまった場合、自分は心を広く持ち、親身になってその人のことをケア出来るであろうかと疑問を持ちました。

 

そして、そのような人になりたいものです。

 

いくら注意していても、せっぱつまった状況化では、もしかしたら犯罪を犯してしまうことになるかもしれません。

 

そんな時うかつな行動に出ると、どんな将来が待ち受けているか…。

 

本書を読みとても身が引き締まり、決して、どんな状況でも犯罪に手を染めることはすまいと強く感じました。

 

こんな人におススメ!

・普通の人がどんなきっかけで犯罪行為を行うのか確認したい人
・詐欺行為を行うと、どのような結末になるのか知りたい人
・人間として、本当の優しさについて考えてみたい人

 

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読書日:2016年3月

 

『転落の記』本間 龍著

 

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