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西武ライオンズ誕生前夜の暗黒な日々を描く

『極貧球団 波瀾の福岡ライオンズ』長谷川 晶一著 書評

 

『極貧球団 波瀾の福岡ライオンズ』長谷川 晶一著

 

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著者は、ノンフィクション作家であり、『最弱球団 高橋ユニオンズ青春記』を書いた長谷川 晶一さん。

 

当事者の人々に丁寧にインタビューを重ね、質の高い作品に仕上がっています。

 

本書は西武ライオンズの前身であり、福岡に本拠地を構えていた最後のライオンズ、太平洋クラブライオンズ、クラウンライターライオンズの1972年から1978年までの、6年間の奮闘を描いています。

 

太平洋クラブライオンズのさらに前は、西鉄ライオンズであり、八百長が発覚した、黒い霧事件が起きて以降、経営が立ちいかなくなり、西鉄が撤退。

 

球団運営時代は、福岡野球という会社が行っていたのですが、この会社とネーミングライツなどのスポンサー契約を結んだのが、太平洋クラブであり、クラウンであったのです。

 

しかしながら、これらの企業は経営が厳しくなり、十分なスポンサー料が払えない事態に。

 

本書のタイトル通り、「極貧球団」となり果て、球団メンバーは苦しみ、もがきながら戦うようになります。

 

設備はボロボロ、練習用のボールは他球団からくすねてきたというから、オドロキです。

 

さらにシーズンオフに、選手はアルバイトをして、生活をしのいでいたとのこと。圧巻は、オフの間に自衛隊に入隊していた永射保投手。

 

今のプロ野球界でここまでの格差が出ていたら、問題になってしまうのではないでしょうか。

 

長いプロ野球の歴史の中で、こんな事態が起きていた時代もあったんだなあと思うと、感慨深いものがあります。

 

そして、このライオンズにおいて天国と地獄を味わったのは、若い時からエース格として活躍していた東尾修投手です。

 

20年間の現役生活の中で、前半10年はいわゆる「福岡ライオンズ」にいて、後半10年は「西武ライオンズ」で活躍。

 

ライオンズの波瀾の経歴をもろにかぶり、スリリングで充実した現役生活を送れたことが、インタビューから伺えます。

 

さらに、真弓選手。

 

てっきり最初から阪神の選手かと思っていたのですが、真弓選手も「福岡ライオンズ」の一員だったとは。

 

西武ライオンズになる前のシーズンオフに阪神に移籍。

 

1985年の西武ライオンズとの日本シリーズでは、今でも忘れられない一戦なのだそうです。

 

他にも観客動員を目指して行った、ロッテとの遺恨闘争や中学生で入団させた2人の15歳のプロ球児など、興味深いエピソードがたくさん。

 

最後の章では福岡ライオンズOBが当時のことを振り返っているのですが、それでも「あの頃は楽しかった」と多くの人が述べているのが印象的でした。

 

長いプロ野球の歴史の中で、様々なドラマがあるものですね。

 

こんな人におススメ!

・福岡ライオンズについていろいろと知りたい人
・球団史上、1・2を争うであろう、極貧球団の実態を知りたい人
・黒い霧事件が与えた影響について知りたい人

 

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読書日:2016年03月

 

『極貧球団 波瀾の福岡ライオンズ』長谷川 晶一著

 

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