ストーリーらしいストーリーはなく雰囲気を楽しむ作品
『ふる』あらすじ
池井戸花しす、28才。たまたま行った産婦人科で出会った2歳年上のさなえと、2匹の猫と一緒に暮らしている。
数年前に職場不倫をしていたデザイン事務所を辞めた花しすの今の仕事は、アダルトビデオへのモザイクがけ。
「いつだってオチでいたい」と望み、周囲の人間に嫌われないよう受身の態度をとり、常に皆の「癒し」であろうとして、誰の感情も害さないことにひっそり全力を注ぐ毎日だった。
一方で、花しすには誰にも言っていない趣味があった。
電源の入ったICレコーダーを常にポケットにしのばせ、街の音や他人との会話を隠し録りして、そしてそれを寝る前にこっそり再生し、反芻すること。
くり返し花しすの前に現れる謎の男性、新田人生。
寝たきりのまま亡くなった父の母である祖母、そしてその祖母を介護していた母。
モニター越しに性器を露にする見知らぬ外国人女優EVRYN。
そして常に傍らに漂う「白いもの」……
花しすが見つめ、他の誰かにいつも見つめられてきた自らの人生。
その記憶を反芻するように、彼女は何度もICレコーダーを再生する。
そんな時、レコーダーから突然声が響く。
「忘れんといてな」
それは花しすの母が、かつて不意に花しすに向けてつぶやいた一言だった??
『ふる』書評
西加奈子さんについては、何度かテレビなどでお見掛けし、明るくハキハキした方だなという印象を受けていました。
作品は今まで読んだことがありません。
直木賞作家であり、知り合いの女性に好きな作家をたずねると、よく西加奈子さんの名前があがるので、読んでみようと思った次第です。
タイトルの面白さや装丁の可愛らしさで本作をピックアップしてみました。
読んだ感想としては、ストーリーらしいストーリーがなく、全編、ふわふわした感じで、物語としてよりも、作品全体の雰囲気を楽しむ作品なのかなと思いました。
私の場合、どちらかというと、ストーリーを重視するので、その点では残念ではありました。
しかし女性らしい感性や描写は感じるので、この辺りが女性に支持される理由なのだろうなというのも理解出来ます。
読んでいてちょっと混乱する部分もあります。
それは急に話が過去にとんだり、現在に戻ったりするので、しっかりといつの時期のエピソードかを確認しなければいけません。
そして「新田人生」という人物が出てくるのですが、場面場面で役柄が変わって登場するので、こちらも最初は混乱するでしょう。
本作はちょっと変わったタッチのようなので、西さんの他の作品も読んでみて、改めて評価したいです。
こんな人におススメ!
・ストーリーよりもその作品の雰囲気や感性を楽しみたい人
・主人公と同じ、20代半ばの女性の人
・女性らしい感性を感じられる作品を読みたい人
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読書日:2016年5月
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