「掃除」が競技スポーツに。独特の世界観で評価が分かれそう
『コロヨシ!!』あらすじ
20xx年、日本固有のスポーツ・掃除は、戦後の統治政策の一環で国の統制下に置かれていた。
日本で「掃除」を表立ってできるのは、高校生活の3年間、部活動としてだけだった。
幼い頃から密かに掃除を続けてきた、西州第一自治区の高校生・藤代樹は、才能を持ち、新人戦で優勝という結果を残しながらも「ただの部活」だと冷めた態度でいた。
だが翌年の夏の大会でエリート校の「掃除」を目の当たりにし、壮絶な敗北感を味わう。
『コロヨシ!!』書評
三崎亜記さんの作品は、デビュー作の『となり町戦争』以来、時折読んでいます。
独特の世界観に特徴があり、「こんな世界だったらそれはそれで面白そうだ」と感じさせるリアリティーがあります。
本書は三崎さんの作品群の中でも厚めの本で、その世界観にどっぷり入り込めるかなと感じ、手に取ってみました。
ジャンルとしてはスポーツ青春小説という感じになるのでしょう。主人公は高校生です。
ティーンエイジに受けそうな内容で、今までと少し毛並みの異なる作品です。
さらに、シリーズ化され、今では3作目まで存在。アニメ化希望の声も多いようです。
とはいえ、その世界観はやはり独特で、どうやら『となり町戦争』など一連の三崎作品の世界を踏襲しているのかなという印象を受けます。
そして何といってもこの作品の柱となる設定になっているのが、「掃除」が競技スポーツとなっている点。
基本的な競技内容は、長物(ほうきのような道具)を使い、塵芥を回収するというもの。
さらに2つの形式が存在します。
【散華の舞】
芸術点、技術点を競うフリースタイル競技。個人とペアがある。
【還立の舞】
乱したフィールドを元の状態に「復元」する速度と美しさを競う団体競技。
つまりはフィギュアスケートのようなものなのでしょう。
この競技は国家保安局の管理下に置かれており、高校の部活動の3年間だけ行うことが許されるという何とも謎めいた競技なのです。
主人公である、高校生の藤代樹は、青春時代をこの「掃除」活動にかけていくという物語です。
このように設定は面白いのですが、世界があまりにも独特すぎて、その世界に入り込むのに苦労しました。
ちょっと中だるみも途中にあり、興味の持続がなかなか困難。
それでも、「掃除」の成り立ちにせまる終盤はがぜん面白くなります。
もう少し、全体的にストーリーの山場を作っていけば良かったです。
最後に、「掃除」の立ち位置が大きく変化していきます。
今までマイナースポーツだった「掃除」が大いに注目する競技になりそう-。
そんな期待が大きくなるところで終了。
以後、続編でよりダイナミックに物語が展開していくであろうことが想定されます。
今のところ続編を読む予定はありませんが、機会があればいつかはまたこの世界に戻ってみたい気もしますね。
ハマる人となかなか受け付けられない人と2極化される作品でしょう。
こんな人におススメ!
・青春スポーツ小説が読みたい人
・独特の世界観にハマりたい人
・フィギュアスケートが好きな人
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読書日:2016年12月
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