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マスメディアの中枢でうごめく魑魅魍魎。ノンフィクションに近いという衝撃

『ガラスの巨塔』今井 彰著 書評

 

『ガラスの巨塔』今井 彰著

 

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表紙に記載されている著者名今井彰の横に、元「プロジェクトX」プロデューサーと書かれてあります。

 

今井さんはNHKに入社後、エグゼクティブ・プロデューサーに。NHKスペシャルで数々の放送賞を受賞し、200年には社会現象にもなった番組「プロジェクトX」を立ち上げ、2009年に退局されています。

 

本書の物語は著者ご自身の経歴が色濃く反映されており、全ての名称は想定しやすいものになっています。

 

例えば、「全日本テレビ協会」=「日本放送協会(NHK)」、「チャレンジX」=「プロジェクトX」、「藤堂会長」=「海老沢会長」という具合です。

 

巨大公共放送局で三流部署ディレクターだった西悟が主人公であり、名実ともにNo.1プロデューサーにのし上がります。

 

手がけた番組「チャレンジX」は視聴率20%超の国民的番組となり、特別職に誰よりも早く抜擢されることに。

 

しかし、天皇と呼ばれる会長が失権すると事態は一転…。組織内部に渦巻く野望と嫉妬を書いています。

 

本書では出世のことしか考えない自己中心主義の人物が多く登場し、妬みや嫉妬が渦巻く中、西に数々の妨害をしていきます。

 

公共放送局でありながら、ドロドロの権力闘争が描かれ、鬼気迫る描写はさすが元テレビ局員という印象です。

 

しかし、読後に調べてみるとこの話はほぼノンフィクションに近いという噂が。

 

そうなると受ける印象は全く異なってきます。

 

実際にNHK社内の力学が派閥主義で自己中心で動いている組織であったら…。そう思うとゾッとしてしまいます。

 

それだけ酷い人物が登場します。

 

しかしながらこの物語の通りに、「プロジェクトX」は海老沢会長が退任してすぐに打ち切りが決定、プロデューサーも冤罪で逮捕されています。

 

ここまで陰湿な組織が、しかも日本を代表するマスメディアの中枢が、、そう考えると日本という国はいつまで経っても良くならないのではないかと心配になってしまいます。

 

こんな人におススメ!

・日本の公共放送における組織の腐敗ぶりを知りたい人
・「プロジェクトX」制作の周辺で起きていた出来事を知りたい人
・足を引っ張り合う組織がどのようなものか把握したい人

 

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読書日:2015年4月

 

『ガラスの巨塔』今井 彰著

 

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