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日本人ホームレスから見たニューヨーク
『ニューヨーク底辺物語』境セイキ著 書評
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大学の卒業旅行で初めてニューヨークに行った時にこの街が大好きになり、既に10回以上は訪れています。
行くたびに変化する景色と夜遅くまで楽しめる様々なエンターテイメントに飽きることがありません。
本書はそんなニューヨークが舞台になっていますが、面白いのがホームレスの視点から書かれているということ。
他の本にはない貴重な情報が詰まっていて、体験記としてもめっぽう面白く仕上がっています。
著者の境セイキさんは92年にグリーンカード(アメリカ永住権)を取得し、アパレル商社をニューヨークに設立。
しかしながら、その会社は廃業し、住んでいたアパートを強制退去させられます。そこから6年間ホームレス生活を送ることになり、その体験記がこの本で綴られています。
同時に、境さんはドラッグにもハマっており、その恐ろしさも伝わります。
境さんは空き缶拾いで小銭を稼ぎ生活しているのですが、印象的だったのはニューヨークという街の懐の深さです。
ホームレスを受け入れる土壌がしっかりと出来ており、アメリカの余裕と豊かさを感じさせます。
それは、「ホームレス達の豊かな食生活」として書かれており、ニューヨークの人々の善意により食べ物を恵んでくれる機会が多く、6年間で一番良い物を毎日食べていたそうです。
一人で食べきれる以上の量をもらうので、同じホームレスの友達を分けて食べるほどなのだとか。
さらに、「スープ・キッチン」と呼ばれるホームレスや貧しい人達に無料で食事を提供してくれる施設があるそうで、年間365日タダでしっかりとした食事が出来る仕組みがあるのです。
少なくとも餓死することはなく、ホームレスに対し、冷たい視線を向けてしまう傾向がある我々日本人は学ぶべき点も多いのではと感じました(実際、日本人の多くは境さんの存在を無視しているかのように振る舞っていたそうです)。
食費はまったく必要なかったので、お金は貯まる一方で逆に不安になったというからすごいことです。
私はニューヨークに行く度にその文化的な豊かさを感じてきました。
凶悪犯罪もほとんどなくなり(東京より安全という話も聞きます)、夜遅くまでミュージカルや映画、ジャズなどを楽しめる街はこのような弱者に対するセーフティネットがしっかりしているからこそあらゆる面で豊かになっているのでしょう。
このように別の角度からニューヨークを知ることが出来、とても有意義な一冊となりました。
こんな人におススメ!
・ニューヨークを違った側面から知りたい人
・アメリカと日本のホームレスに対する扱いの違いを知りたい人
・ドラッグの恐ろしさを感じたい人
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読書日:2014年7月
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