歴史の評価は立場によって変わってしまう
『司馬史観と太平洋戦争』潮 匡人著 書評
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タイトルで挙げられている「司馬史観」とは、日清・日露だけを美化し、戦前・戦中の昭和を断罪した作家・司馬遼太郎の歴史観です。
『坂の上の雲』などの作品で一貫して司馬さんが主張しているものであり、影響力が極めて大きい作家であるだけにその見方については賛否両論がありました。
著書の潮匡人さんは評論家。空港自衛隊員や書籍編集者、シンクタンク客員研究員などの経歴もお持ちです。
本書では司馬史観に対して疑問を呈し、さらには左右のイデオロギーによって書き換えられてしまった過去について、昭和史をどのように振り返るべきかを伝える内容になっています。
元々、月刊「正論」「別冊正論」「諸君!」で発表していた評論を再構成し、加筆修正したもので一貫性がない箇所も見受けられます。
トピックスとしては、「司馬史観の影響」や「朝日・読売共闘宣言への批判」、「リベラル派への反撃」など保守派の潮さんならではの論調を展開します。
但し、ちょっと主観的な意見が多いかなという印象です。
これらの意見に同意するかどうかは別として、現在、太平洋戦争についてどのような評価がなされているのかを把握することが出来ました。
しかしながら、それぞれの立場によって同じ対象物であっても見方が変わってしまうものなのだという印象です。
歴史は政治の道具にもなりうるわけですし、平気で捻じ曲げてしまうことだって出来るわけです。
そして、最終的には検証の客観性よりも、「勝者の理論」で押し切られてしまうことが多いのではないでしょうか。
歴史の評価は数学のようにハッキリとした答えがあるわけではありません。
それだけに難しい対象ではありますが、可能な限り客観的な視点で考え、分析し、判断するということしか現状は出来ないのではと思うのです。
こんな人におススメ!
・太平洋戦争に関し、どのような評価がされているか把握したい人
・司馬史観について知りたい人
・靖国問題に関心がある人
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読書日:2014年1月
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