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歴史に対する評価はバイアスがかかることが前提となる

『「坂の上の雲」に隠された歴史の真実』福井 雄三著 書評

 

『「坂の上の雲」に隠された歴史の真実』福井 雄三著

 

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司馬遼太郎の『坂の上の雲』は最も好きな小説の1つであり、今でも定期的に読み返しています。今回紹介する本を読む2か月前には愛媛県松山市まで行き「坂の上の雲ミュージアム」を見学しました。そんな『坂の上の雲』に隠された真実が存在するというタイトルに惹かれ手に取ってみました。

 

著者の福田雄三さんは国際政治学、日本近現代史を専攻する大学助教授。本書ではいわゆる「司馬史観」についての反論を試みながら、歴史評価のバイアスのかかり方に言及。『坂の上の雲』以外に、ノモンハン事件やユダヤ人迫害なども取り上げています。

 

『坂の上の雲』を読んだ方はご存じだと思いますが、最も印象に残るシーンの1つといえば、日露戦争において乃木希典が指揮した旅順攻防戦でしょう。乃木の戦術のまずさで失敗を重ね、甚大な死傷者を出す結果になりました。司馬遼太郎は『坂の上の雲』の中で乃木大将の無能っぷりを指摘しています。

 

しかしながら、福田さんによると乃木大将はもっと評価されてしかるべき人物であると述べています。福田さんは乃木大将は精神的プレッシャーに強く、また、状況からして他の人が指揮をしてもこれ以上の犠牲が出るのはやむをえなかったと主張します。また、一兵卒に至るまで奮い立たせたのは乃木大将の器量であると断言しています。

 

また、「明治はよかった戦前の昭和は暗黒だった」という司馬遼太郎の見方にも福井さんは反論を試みます。これには東京裁判史観の影響、そして背後に中国の外交革命があると述べ、写真などで具体的な証拠を提示しています。

 

読み終えて、改めて歴史に対して公平な評価を下すのはとても難しいものなのだと実感しました。評価する側の立場や思想、環境により見方はどうしても変わってしまうもの。何事も都合よく解釈してしまうというのは避けられないのかもしれません。

 

そんな状況において私たちが正当に歴史を評価するとしたら、様々な視点の書物を読み、自分なりに客観的に判断をするしかないのかなと感じます。

 

こんな人におススメ!

・司馬遼太郎『坂の上の雲』が好きな人
・司馬史観に対して別の角度からの見方を知りたい人
・歴史に対して多角的な意見を学びたい人

 

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読書日:2014年4月

 

『「坂の上の雲」に隠された歴史の真実』福井 雄三著

 

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