終戦後に現れる人間の醜い本性
『C級戦犯がスケッチした巣鴨プリズン』飛田時雄著 書評
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太平洋戦争終戦後にC級戦犯と認定された著者が巣鴨プリズンで服役された日々(重労働30年の判決となり、その後10年の減刑、1955年に仮釈放されている)をご自身のイラストと一緒に語られています。
巣鴨プリズンではA級戦犯の方々とも共に過ごされ、筆者からの視点で戦時中に国の幹部だった方々の本性が描かれておりめっぽう面白いです。
ちなみに、巣鴨プリズンの存在は知っていましたが、現在のどの場所にあったのかは知りませんでした。
巣鴨プリズンは1971年に解体され、1978年跡地にサンシャインシティが建てられています。
著者は巣鴨プリズンでの生活を楽しくもあり、有意義な体験でもあったと語っています。
本書ではプリズン内での暮らしの日々が詳しく書かれており、大変興味深いものになっています。
この本を読んで私がとりわけ関心を持ったのが、戦時中は組織のトップにいた人々の終戦後に表面化したその人間性です。
例えば、大森捕虜収容所で捕虜に容赦ない制裁を加えていた渡邊睦裕はC級戦犯として挙げられたことを知り、戦犯追及がなくなるまで逃亡と潜伏を続けています。
また、徳田久吉軍医大尉は死刑が決まったあと、発狂し精神病に陥ったように芝居を打ち、死刑から免れています。
彼らは先日中、死をも厭わない覚悟があるという態度をとりながら、いざ死に直面すると醜いまでに生きることに固執し、著者を失望させています。
一方でこの本を通して、東条英機のイメージが変わりました。
『東条英機内閣の1000日』にも書かれていたり、映画やドラマを見ると東条はダーティーなイメージがつきまとうのですが、プリズン内での東条の態度は他のA級戦犯と違う印象でした。
著者も当初は憎しみしかわかなかった東条に対し、心象が変化しています。
それは、筆者がA級戦犯の部屋の掃除をすると、ほとんどの人はそれを当然と思い、お礼も言わないのですが、東条はきちんと筆者にお礼を伝えるのです。
他にも細やかな心配りを筆者に見せ、筆者の想いは徐々に変わったものになります。
戦後、巣鴨プリズンに収容されたとなるとかなり過酷な扱いをされているというイメージを持っていましたが、本書を読むとそのイメージも変わって来ます。
実際の体験者の発言により実際の状況を知ることが出来る貴重な資料であると感じます。
こんな人におススメ!
・戦犯者の巣鴨プリズンでの生活をよりリアルに知りたい人
・環境が変化した時の人間の本性を知りたい人
・終戦から戦後にかけての状況の変化を知りたい人
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読書日:2015年8月
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