過酷な状況で人間の本性がむき出しになる悲惨さ
『孫に語り伝える「満州」』坂本 龍彦著 書評
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本書は著者の坂本龍彦さんが小学校4年生だった1942年(昭和17年)の時に、家族で日本人開拓移民として満州に渡り暮らした日々と1986年に再訪して取材した時のことが書かれています。
私は昨年と今年の2回、旧満州(今の瀋陽)に旅行に行きました。意外にも親日的傾向が強いとのことで現地の皆さんはとてもやさしかったのですが、瀋陽九一八歴史博物館といった反日施設もあり、満州についていろいろと学んでみたいという想いが強くなっていました。そんな中、手に取った本になります。
本書では、坂本さんの満州での暮らしぶりが書かれており、行った本人でしか体験できないような生々しい数々のエピソードが綴られています。終戦間近でソ連軍がなだれ込んできて、日本の軍隊はいち早く後退し、あてにならない状況でバタバタと民間人が死ぬ状況や戦後、収容所で死んでしまった友達の兄弟の話など。
戦後、国外にいた日本人は切り捨てられ、難民となってしまう。環境次第で、人としての感覚が狂ってしまい、憎しみは新たな憎しみしか生まないということがよくわかります。
この時代の日本人の行動は反省すべき点が多いのではないでしょうか。「日本は戦争に敗けることはない」という狂信的な国民全体の思い込みがより一層悲惨な状況を作り上げてしまったのです。
日本人は全体の空気に流されやすく、それが間違った方向に行ってしまうリスクも十分はらんでいると感じます。
冷静な判断と、お互いの立場を理解する気持ちがどのような状況においても大切なのだと本書を通じて思いました。
こんな人におススメ!
・戦時下の満州の暮らしの様子をリアルに知りたい人
・過酷な環境の中で人間がどのように変貌するか知りたい人
・残留孤児や731部隊について詳しく知りたい人
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読書日:2015年3月
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