1人1人の解説が薄く、もう少し深堀して欲しかった
『ビヨンド・エジソン』最相葉月著 書評
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『絶対音感』『星新一 1001話をつくった人』などベストセラーを生み出しているノンフィクションライター最相葉月さんが科学分野を取材対象にして挑んだ本。
『星新一 1001話をつくった人』を読んだことがありますが、星新一がショートショート作品のイメージとはかけ離れた「強烈な個性の持ち主」だったということがわかり、夢中になって読んだ記憶があります。
本書では日本人の科学者が12人登場し、それぞれの熱意と純粋な好奇心の源泉に迫るという内容。
各章のタイトルでは、研究者とその研究者が影響を受けた人物の名前が書かれており、具体的には下記の通りとなっています。
・日本生まれの薬でアフリカ睡眠病に挑む(寄生虫学者・北潔と医師シュバイツァー伝)
・恐竜少女が首長竜の新種と出会う(古生物学者・佐藤たまきと数学者・藤原正彦の青春記)
・世界の乾燥地で植物生産の向上を目指す(農業気象学者・坪充と反アパルトヘイト運動の闘士ネルソン・マンデラ伝)
・地震国日本から世界に発信する(地震学者・石田瑞穂と国語学者・大槻文彦伝)
・南極の「空気の化石」に地球の歴史を見る(物理学者・深澤倫子と雪博士・中谷宇吉郎の研究生活)
・言葉の不思議を探究する(音声工学者・峯松信明と動物科学者テンプル・グランディンの自閉症報告)
・ウイルス感染症のメカニズムに迫る(ウイルス学者・甲斐知恵子と物理学者マリー・キュリー伝)
・「空飛ぶ化学工場」黄砂を日本と中国で観測する(物理学者・岩坂泰信と探検家・大谷光瑞伝)
・人間とコンピュータの対話をデザインする(情報科学者・中小路久美代と作曲家モーツァルト伝)
・顕微鏡を覗いて生命の本質を探究する(生物物理学者・徳永万喜洋と発明家トーマス・エジソン伝)
・地球から宇宙船を操縦する(宇宙科学者・矢野創と宇宙飛行士エリスン・オニヅカ伝)
・アルツハイマー病の解明に挑む(脳神経科学者・星美奈子と霊長類学者ジェーン・グドール伝)
私がこの本から期待していたことは、「各分野の最新の研究成果を知りたい」ということでした。
その意味からすると、1人あたりの紹介するページ数はだいたい15ページ程度。
さらに、「影響を受けた人物」についても触れているため、研究者1人あたりの情報が薄く、期待していたレベルまで知りえることが出来なかったのは残念だったというのが正直なところです。
「はじめに」でも書かれていましたが、影響を受けた人物もページの都合上、それぞれ1人に絞ってもらったということで、このあたりもちょっと無理やり感があったのは否めなかったかと。
もう少し、紹介する研究者の人数を減らして、その分、1人1人を深堀してじっくり書いていけば、面白味と深みが増しただろうにと感じてしまいました。
こんな人におススメ!
・様々な分野の研究概要を知りたい人
・現在活躍している科学者の「研究に進む動機」を知りたい人
・最相葉月さんの本が好きな人
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読書日:2015年12月
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