「万引きをしていいことなんて一つもない」ということを強く感じさせてくれる
『万引きGメンは見た!』伊東 ゆう著 書評
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著者の伊東ゆうさんは、現役の万引きGメン。
「万引きGメン」とは警備会社に雇用された保安員で、万引きの監視に当たる仕事をされている人のことを指します。
本書は著者が万引きGメンの仕事を通じて起きた様々なエピソードをまとめた1冊となっています。
全体的にユーモラスな文体で読みやすいのですが、内容自体はかなりハード。
特に、万引きがバレでしまった犯人の必死のあがき具合がすごい。
中にはナイフを持ち出して抵抗するような人もおり、まさに命がけの商売。
肉体的にも精神的にもタフではないとやっていけないですね。
日常ではなかなかわからない、エピソードの連続でおおいに刺激になります。
そして、万引きは思っていたより頻繁に起こる犯罪なんだということも感じました。
特に印象に残ったのは、あとがきで述べている、「万引きをしている人の共通点」。
伊東さんは、下記のように書いています。
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離婚、離散、生活苦、不況、倒産、失業、いじめ、孤独、拒食症、過食症、アルコール依存症・・・。
いずれも愛や絆を失うような不幸な言葉ばかりだが、捕獲された万引き犯のほとんどが、これらの言葉を必ずひとつは口にするのだ。
補足された未成年者の母子家庭率や、主婦の離婚率、老人の孤独率も非常に高い。
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つまりは、「家族を単位とする愛情や絆の維持」がこうした犯罪を低下させるキーワードであり、この根本的な要因が解消しない限りは、犯罪が減ることもないというわけで、社会との密接な関係をうかがい知ることが出来ました。
万引きはたとえ数百円の盗みでも、捕まったら、数年間の禁固刑にもなる可能性がある犯罪です。
この「全く割に合わない」犯罪であるということを知るだけでも、万引きの犯罪数は減るのではないかとも感じました。
こんな人におススメ!
・生活保護受給について知りたい人
・日本のセーフティーネットの現状を学びたい人
・日々の生活の有難みを実感したい人
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読書日:2016年5月