知識や深みはかなりあるが、物語としては中途半端
『列島融解』あらすじ
東日本電力社員を経て衆議院議員となった小川正人は、未曾有の大震災後、日本が直面するエネルギー問題に真っ向から取り組んでいた。
原発の行方と、代替エネルギーの可能性は。停滞した経済は復調し、安全は守られるのか。
日本自由党政権となり激動する政財界を見つめながら、この国のかたちを描き直す。
『列島融解』書評
著者の濱 嘉之さんは、警視庁に入庁後、内閣官房内閣情報調査室や公安部考案総務課などを歴任。
辞職後、衆議院議員政策担当秘書を経て、作家デビューしたという経歴の持ち主です。
本書はタイトルが面白そうという理由でチョイス。
濱 嘉之さんの作品は本作が初めてです。
東日本大震災後を舞台に、東日本電力社員を経て衆議院議員となった小川正人がエネルギー問題に取り組むという内容。
実際の職務経験があった人しかわからないような、リアリティ溢れる描写が続きます。
特に、日本にとって中国の策略というのは無視できない存在であり、大きな脅威となっているということがわかります。
しかしながらこれだけ臨場感があるにもかかわらず、物語の完成度としてはイマイチでした。
一つ一つのエピソードは異様に細かいけれど、それぞれのエピソードが有機的につながっていない印象を受けてしまうのです。
物語のダイナミズムが残念ながら欠けてしまっている印象。「木を見て森を見ず」といった感じ。
むしろ「ノンフィクションとして書いてしまった方が良かったのでは」とさえ思うほどです。
文章からとても優秀な作家さんだとわかるだけに、惜しい気がしました。
こんな人におススメ!
・国内で抱かえているエネルギー問題について考えてみたい人
・ノンフィクションに近い小説を読んでみたい人
・政治の世界を味わってみたい人
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読書日:2016年6月
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