脱官僚を目指した鳩山政権が財務省に骨抜きにされるまで
『官邸敗北』長谷川 幸洋著 書評
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著者の長谷川幸洋さんは東京新聞・中日新聞論説委員。
『日本国の正体』で山本七平嘗を取るなど、数々の著書の質には定評があります。
度々、マスメディアでコメンテイターとして発言されているのを視聴し、興味を持ち、本書を手に取って読んでみた次第です。
この本は2010年5月に発行されました。
時は鳩山政権末期であり、当初は国民から大きな期待を受けていたものの、数々の迷走により支持率は右肩下がりを続けていました。
政権当初は「脱官僚」を掲げ、官邸主導の政策を目指していたのですが、結局は官僚の思うがままにコントロールされることに。
これが本書『官邸敗北』というタイトルに繋がっています。
この本では、どのように官僚(財務省)に操られるようになっていたかを順を追って記載しています。目次をざっとみてみましょう。
第1章 官邸連続ミステリー
第2章 民主党抱き込み工作
第3章 ドーナツ化する政権
第4章 操縦されるマスメディア
第5章 財政と天下りを分けるな
終章 新たな政界再編の幕が上がる
一読して感じたのは、財務省の狡猾さ。
政権を担ったことのない民主党と、数々の修羅場をくぐっている財務省ではもともとレベルが全然違かった。
政権をコントロールすることは財務省によって、自民党よりもずっとやりやすかったのでしょう。
そして、そのやり方はとても手練れています。
・蓮舫の発言が注目された「事業仕分け」では、財務省お得意の「ヘトヘト作戦」が行われていた。
過密スケジュールを組み、政権側の仕分け人を疲れさせ、判断能力を徐々にうばい、財務省が望む通りの結論に着地させた。
・閣僚だった菅直人は、当初「脱官僚」を声高に唱えていたのに、09年6月の英国視察旅行から帰ってくると、「使える官僚は使っていく」と路線を軌道修正していた。
そこには、現地で財務省の都合のよいアドバイスをするよう根回しがされていた。
他にも民主党政権を骨抜きにする数々のエピソードが語られ、恐ろしささえ感じるほど。
日本の政権は常に官僚との闘いでもあり、強いリーダーシップを発揮しないことには、このように周囲に振り回されてしまうということなのでしょう。
「民主党政権がいかにダメだったか」というテーマの著作物は多くありますが、新しい切り口で貴重な情報を得ることが出来た一冊でした。
こんな人におススメ!
・官僚(財務省)の政権への対応の仕方を知りたい人
・民主党政権の総括で新しい視点に触れたい人
・鳩山政権が機能しなくなる過程を学びたい人
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読書日:2016年05月
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