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藤子不二雄の経歴を大局的な視点で眺められる

『藤子不二雄論―FとAの方程式』米沢 嘉博著 書評

 

『藤子不二雄論―FとAの方程式』米沢 嘉博著

 

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著者の米沢 嘉博さんはマンガ評論を中心に大衆文化関連の評論を手掛けている方です。

 

さて、日本人で藤子不二雄の名前を知らない人はほとんどいないと思いますが、私が子供の頃、藤子不二雄の人気は絶頂期を迎えていました。

 

ドラえもんの爆発的な人気をベースに、テレビでは『藤子不二雄ワイド』という漫画家の名前を冠にした1時間番組が放送され、『藤子不二雄ランド』というコミック全集が毎週刊行されていました。

 

私はこれらの藤子不二雄作品群に育てられたといっても過言ではありません。

 

そんな藤子不二雄について、改めて理解を深めたいと思い、手に取った次第です。

 

本書では藤子不二雄のデビューからコンビ解散後の活動までをマクロ的な視点で紹介しています。

 

私自身、かなり藤子不二雄については詳しいので、正直目新しい情報はなかったのですが、それでも過去の作品歴をあらためて確認できたのは有意義でした。

 

目次にそれぞれの時代に発表された代表的な作品が掲載されており、それは下記の通りです。

 

第1部目次
※Aは○囲み

 

【1章】テキストとしての「まんが道」
『天使の玉ちゃん』『UTOPIA、最後の世界大戦』

 

【2章】投稿・新人時代のFとA
『漫画少年』

 

【3章】トキワ荘時代のFとA
『タップタップのぼうけん』『わが名はXくん』

 

【4章】新たなるスタート
『海の王子』

 

【5章】日常とヒーロー譚
『てぶくろてっちゃん』『シルバークロス』

 

【6章】少年マンガの完成
『すすめロボット』『恐怖探偵局』

 

【7章】ギャグの時代の中で
『オバケのQ太郎』『サンスケ』

 

【8章】少年誌の中のA
『フータくん』『忍者ハットリくん』『怪物くん』

 

【9章】少年誌の中のF
『パーマン』『21エモン』『ウメ星デンカ』

 

【10章】Aのブラック作品群
『黒イせえるすまん』『仮面太郎』『黒ベエ』

 

【11章】F、SFプロパーへの道
『ミノタウロスの血』『モジャ公』『ドラえもん』

 

【12章】劇画時代の中のA
『劇画毛沢東伝』『魔太郎がくる!!』

 

【13章】F、時代の中での後退
『エスパー魔美』『中年スーパーマン佐江内氏』『T・Pぼん』

 

【14章】A、大河ドラマへの道
『プロゴルフツアー猿』『まんが道』『少年時代』

 

【15章】「ドラえもん」の時代
『コロコロコミック』『藤子不二雄ランド』

 

【16章】コンビ解消後のFとA
『未来の想い出』『用心棒』

 

読んでみて印象的だったのは、ドラえもんをきっかけに大ブレークする前までは「既に終わった漫画家」というイメージを持たれていたという点と、ブレーク後の新作はあまりなく、それまで発表していた作品のリバイバルが中心だったという点。

 

ドラえもんですら最初から人気があったわけではなく、一度はテレビ放送さえ終了し、ジワジワと再評価される形で人気が高まっていったのです。

 

ブレークまでに試行錯誤を繰り返し、やっと世間から評価されるようになったというのが、藤子不二雄の経歴なのです。

 

デビュー時からすい星のごとく現れ活躍した手塚治虫とは売れ方が違うのですね。

 

第2部はFとAの作品論になっていますが、Fの紙面は白のイメージでAのそれは黒のイメージというのは納得です。

 

ずっと2人で漫画を描いていながら、真逆ともいえる志向性を持っていたのは興味深いところです。

 

私が小学生の頃、藤子不二雄のコンビ解消のニュースが流れ、当時はとてもショックを受けたことを思い出します。

 

それまで2人で描いてきたというのは知っていましたが、例えば『ドラえもん』と『怪物くん』は全然タッチが違うのに、それでも共同作業だったと思っていたのは今考えれば不思議です。

 

2人のクリエイターがどのように作品と向き合い、完成形に到達したかの過程がわかり興味深かったです。

 

こんな人におススメ!

・藤子不二雄の経歴をざっと確認したい人
・FとAのそれぞれの作品の相違点を確認したい人
・子供の頃、藤子不二雄作品の影響を受けた人

 

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読書日:2016年7月

 

『藤子不二雄論―FとAの方程式』米沢 嘉博著

 

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