読書の楽しさを伝えるための日々の記録

トップページ【評価順】漫画・関連本> 【読書感想】『絶望の隣は希望です!』やなせ たかし

やなせたかしさんだからこそ見えた「この世の原則」

『絶望の隣は希望です!』やなせ たかし著 書評

 

『絶望の隣は希望です!』やなせ たかし著

 

サイト管理人の評価

 

スポンサーリンク

 

「アンパンマン」を生み出した漫画家やなせたかしさんの回顧録。独自の哲学についても書かれています。

 

2013年10月に94歳でお亡くなりになりました。

 

この本が刊行されたのは、2011年10月。東日本大震災が起きた後です。

 

思えば、震災後、ラジオ局に「アンパンマンのマーチ」へのリクエストが殺到したことがありました。

 

子供向け番組の主題歌でありながら、その歌詞はとても哲学的で奥深く、あらためて歌を聴いて、感心したことを覚えています。

 

実は、アンパンマンを生み出し、ヒットした時、やなせたかしさんは既に60歳を過ぎていました。会社生活でいえば定年後です。

 

超遅咲きともいえるやなせさんの生き方から導き出された人生訓は独特であり、説得力を誰よりも持ちます。

 

・人生は満員電車
我慢して乗っていると、次々と人が降りて行っていって、いつの間にか席が空いて座れる。

 

けれど、ぎゅうぎゅう詰めの満員電車は嫌だ、もう耐えられないと降りてしまったら、それでおしまい。

 

降りないでそこにいること。

 

・「うどんこ」の生き方を大切に
うは「運」、どんは「鈍」、こは「根気」。

 

運をつかむには、自分のやりたいことをずっと継続して、不断の努力をおしまないこと。

 

さて、「超遅咲き」のやなせさんですが、アンパンマン以前には意外な活動をされていたんだなということもわかりました。

 

例えば2014年4月まで57年間使用されていた、三越百貨店の包装紙のレタリングは当時、三越で働いていたやなせさんが手掛けたものだったり、有名な『手のひらを太陽に』という歌の作詞は、当時、漫画家としてヒットが生まれず、絶望の闇の中にいた時に書いたものなのだそうです。

 

そうなると、才能の片鱗は随所にあったんだなあと感じられます。

 

また、やなせさんの奥さんについてのエピソードもページをさかれており、こちらも強く印象に残りました。

 

やさせさんと性格が正反対で何事にもアグレッシブだという奥さん。

 

そんなやなせさんの奥さんが乳がんになり、長くてあと3ヶ月と宣告されるのです。

 

そこから、やなせさんは精力を尽くして看病し、5年の延命を果たします。

 

この間の描写は、やなせさんが奥さんを心から愛していたんだなということが強く感じられました。

 

アンパンマンには、「自己犠牲の覚悟がないと、正義というのは行えない」というテーマがあるそうです。

 

それは、やなせさんが戦時体験を通して、真の正義について考えたことが反映されているそうです。

 

「悪を倒す」というヒーローのアンチテーゼであり、世界で最弱のヒーローですが、ここまで世の中に受け入れられたのは、その根底に人間としての真理が存在しているからだと思います。

 

本書からは、どんな苦労も無駄になることはないし、人の痛みがわかる優しい人間になれるんだということが伝わります。

 

人間の本当の価値について考えさせられる一冊でした。

 

こんな人におススメ!

・思うように結果が出ず悩んでいる人
・真の優しさを身につけたい人
・夫婦の愛の大切さを学びたい人

 

スポンサーリンク

 

読書日:2015年11月

 

『絶望の隣は希望です!』やなせ たかし著

 

サイト管理人の評価