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しみじみと、心が温かくなる物語

『それは甘くないかなあ、森くん。』小野寺 史宜著 書評

 

『それは甘くないかなあ、森くん。』小野寺 史宜著

 

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『それは甘くないかなあ、森くん。』あらすじ

突然だけど、泊めてくんない?
どこにも行けなくても、生きろ!

 

会社を辞め、知人宅を泊まり歩く。
それはちょっとした休暇のつもりだった。
だが、ある日、「樹里ちゃん」という小さな女の子を預けられ、
森くんの放浪生活に異変が起きる―――。

『それは甘くないかなあ、森くん。』書評

小野寺 史宜さんの作品は、今年『牛丼愛』を読み、とても自分好みの話でストーリーも上手く、強い印象が残りました。

 

そこで、次なる作品としてチョイスしたのが本作。なかなかユニークなタイトルです。

 

感想としては、『牛丼愛』ほどのストーリーの巧みさはないものの、とても読みやすく、読後は心がしみじみと温かくなりました。

 

この物語の主人公、森くん(26歳)は、東京のデパート勤務をしていたが、傲慢なお客さんの態度に嫌気を差し、退職。

 

そして社員寮を追い出され、1週間の間様々な友達の家に泊まりに行きます。

 

一時の感情で仕事と家を失ってしまった、森くんの放浪記。

 

各章毎に泊まりに行った一夜が書かれ、それぞれで泊めてくれる人物にも様々なドラマがあり・・・とった内容です。

 

目次は下記のようになっています。

 

【水曜日、第1夜】揺れ動く 高田馬場の 橋の上
【第2夜】彼方には 東京タワー 車中泊
【第3夜】川の字で ほとりを往くよ 江戸川の
【第4夜】世田谷の 壁の向こうに 妻がいる
【第5夜】焼鳥の 煙にむせぶ 町屋かな
【第6夜】天王洲 高みに浮かび さわさわと
【第7夜】地に潜り スマホが灯る 日本橋
【もう一度、水曜日】何やかな 始まりもまた 橋の上

 

泊まりに行く人々は、大学や高校時代の友達、姉の友達、職場の同級生など様々。

 

それぞれ実に個性的です。

 

一人だけ天王洲のタワーマンションに住んでいる、親が裕福で良い想いをしている伊藤という人物以外は、どちらかというと人生がさほどうまく行っていない人ばかり。

 

しかしながらそのような人々が終章になるにつれ、繋がり出し、ちょっとした奇跡を起こします。

 

それぞれ様々な問題を抱かえているからこそ、人は優しくなるのだなと思わせてくれます。

 

伊藤の家を緊急の用事で去る時、「もうここに来ることはないだろうな」と森くんが感じたシーンが印象に残ります。

 

人生いろいろあるけれど、明るく前向きに生きていく。

 

そんな、元気をくれる作品です。

 

こんな人におススメ!

・心温まる物語を読んでみたい人
・人物が生き生きしている物語を読んでみたい人
・読みやすい小説を探している人

 

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読書日:2016年12月

 

『それは甘くないかなあ、森くん。』小野寺 史宜著

 

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