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無心の心が引き起こした昭和の奇跡

『TOKYOオリンピック物語』野地秩嘉著 書評

 

『TOKYOオリンピック物語』野地秩嘉著

 

サイト管理人の評価

 

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2020年の東京オリンピックに向けて準備が行われていますが何かとトラブルが絶えません。

 

新国立競技場の再建問題、エンブレムのデザイン盗用問題、東京都観光ボランティアユニフォームの酷評などあらゆる部分でちぐはぐな現象を生み出しています。

 

一体何が起こっているのかと考えずにはいられません。

 

そして、今の状況と1964年の東京オリンピックの模様を紹介している本書を比較すると取り組む人々の根本にある「心」が大きく違っていると感じてしまうのです。

 

本書は1964年の東京オリンピック開催に向け裏で支えた人々の取り組みを紹介しています。

 

エンブレムや公式ポスターを手掛けたグラフィックデザイナー亀倉雄策(この時の作品は今もなお光り輝きため息をついてしまうほどです)、選手村の料理長を務めた帝国ホテル料理長村上信夫、選手村の警備を請け負い社名を挙げたセコム創業者の飯田亮、記録映画の総監督を務めた市川崑などもはやレジェンドと呼ばれるようなそうそうたる面々が登場します。

 

この本は1995年に取材を始め、出版まで実に15年もかかったとのことで当時の状況がありありと活写されている魂のこもった良書です。

 

一読して、当時の人々と2020年のオリンピックに取り組む人々とでは「熱気と活力」が全く異なっていたことがわかります。

 

それは、敗戦から高度成長に至る中で「アジア初のオリンピックを何としてでも成功させよう」という強烈な想いがあるからなのでしょう。

 

本書によると準備に関わる人々はそれこそ手弁当で国の威信・名誉のためだけで取り組んでいたそうです。

 

そこには「日本のために何としても東京オリンピックを成功させよう」という無心の心が働いている印象が受けます。

 

この想いがとんでもないパワーとなり今もなお語り継がれる多くのエピソードが誕生したのでしょう。

 

例えば、新国立競技場などはゼネコンの利権が絡んでいうという噂がありますし、もしかしたら戦後復興などといった明確な目標のない現在の日本の環境だと「国のため」というより「自分の名誉のため」という想いいなりがちなのかもしれません。

 

そう考えるとあの時代だからこそ起こりえた奇跡だったのではないかなと思えてくるのです。

 

こんな人におススメ!

・1964年の東京オリンピックのエンブレムやポスターなどの制作過程を知りたい人
・1964年の東京オリンピックの当時の時代背景を知りたい人
・今やレジェンドとなっている各界のプロフェッショナルの仕事術を知りたい人

 

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読書日:2014年1月
記入日:2015年8月(当時の感想文をベースにリライト)

 

『TOKYOオリンピック物語』野地秩嘉著

 

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