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読んで楽しめる「ガリガリ君」成功の秘密
『言える化 「ガリガリ君」の赤城乳業が躍進する秘密』遠藤功著 書評
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アイスの代表的な人気ブランドの1つといえば「ガリガリ君」。
成熟し、低迷が常態となっている日本のアイス市場において「ガリガリ君」はここ数年驚くほどの勢いで売上を伸ばし、2012年のお売上本数は4億3千本に達したそうです。
本書はそんな「ガリガリ君」を開発する赤城乳業に著書が潜入し、その躍進の秘密を解き明かす内容。
本の装丁がとっても美味しそうで「読んで楽しむガリガリ君」といった趣です。
本書は7章から構成され、それぞれのタイトルは「躍動する若者たち」「『強小カンパニー』への道程」「ドリームファクトリーの建設」「『ガリガリ君」大ブレーク」「『言える化』こそ競争力」「自分のために働け」「躍進する若者たち、再び」となっています。
まず、章のタイトルに書かれているように、若者の活用がこの会社のキーワードの1つになっています。
若いうちから積極的に権限移譲を行い、2012年9月に発売し、世の中に強烈なインパクトを与えた「ガリガリ君リッチコーンポタージュ味」を生み出したのは何と、20代の若い2人組だったそうです。
また、第2章の「『強小カンパニー』への道程」では、ガリガリ君を開発、ヒットさせるまでの経緯が描かれ、とても興味深いです。
「ガリガリ君」は、当時、業績が低収益にあえぎ、新しい柱となる商品が望まれていた時に、「50円で売れる商品を作れ」という社長の号令の元、開発されたそうです。
しかしながら、出した商品はどれもヒットせず、2年経ってもまったく先が見えなかったとか。
そんな状況で、「片手で食べられるアイス」というコンセプトで開発されたのが「ガリガリ君」だったそうです。
商品開発のリーダーは「失敗また失敗の連続。社長もよく我慢してくれたもんです」と語っています。
さらに、発売当初は運搬時の振動でバラバラに崩れクレームの嵐だったとか。
そして、発売当初(1981年)から売れたわけではなく、年間1億本を突破したのは、さらに19年が経過した2000年だったのです。
いかにベストセラー商品を生み出すのが大変かがわかります。
本書を読んで、赤城乳業躍進の要因は次の2点につきると感じました。
その1:失敗を許容するチャレンジングな風土
先述した若者への大胆な権限移譲もそうですが、本のタイトルの「言える化」にもあるように社員が自由に意見を言える社風が根付いていることがわかります。
そもそも赤城乳業のコーポレートスローガンは「あそびましょ。」。
古い社宅を営業本部にして、「秘密基地」化させたり、「失敗」にめげない評価制度を作ったり、部下から上司への人事評価があったり。
読んでいて、とにかく失敗が多いという印象だったのですが、そもそもそんな失敗を大量に生み出せる土壌があるからこその現象ですし、だからこそ「ガリガリ君」や「ガリガリ君コンポタ味」というような奇想天外な商品が生まれるということなのでしょう。
普通を嫌う風土が社内にはあるそうで、これは企業にとってとても価値のあることではないでしょうか。
その2:英断出来る社長の資質
こちらも先述していますが、たくさんの失敗を許す度量が井上社長には備わっています。
そして、英断と語られているのが、2008年の新工場建設の決断です。
この年はリーマン・ショックが起き、どの会社もリスクをとることを逡巡していました。
そんな中、井上社長は年間売上高232億円に対し、100億円を超える設備投資を行うことに。
最新鋭の設備を誇り、製薬企業並の品質管理、年間8万キロリットルもの生産能力を保持するこの工場は2010年に完成。
2012年に年間4億3千万本の売上という偉業を達成させる原動力になったのです。
このように、赤城乳業はメーカーとして欠かせないチャレンジングな風土、そして極めて優秀な経営者によって、長い年月をかけて成長してきたことがわかります。
他にも、「極寒の札幌で『ガリガリ君』を配布する」など普通じゃないキャンペーンの数々や「ガリガリ君入浴剤」などユニークな関連商品も紹介され、楽しく読むことが出来ます。
これを読むと、きっと「ガリガリ君」がますます好きになるでしょうね。
読後すぐにコンビニに行き、「ガリガリ君」を買って食べてしまいました。
こんな人におススメ!
・「ガリガリ君」が好きな人
・躍進するメーカーの原動力を学びたい人
・大ヒット商品が生まれて育つ過程を知りたい人
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読書日:2015年10月
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