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明治維新の見方が変わる、「薩長史観」について言及

『もう一つの「幕末史」』半藤 一利著 書評

 

『もう一つの「幕末史」』半藤 一利著

 

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著者の半藤 一利さんは作家として、近現代史、昭和史に関する史論や人物論を多数執筆されています。

 

代表作としては、『ノモンハンの夏』『決定版 日本のいちばん長い日』が知られ、半藤さんの著書は既に何冊か読んでいます。

 

本書は、私が興味がある「幕末」をテーマに書かれており、迷わず手に取ってみました。

 

本書の目次は下記のとおり。

 

第1章 維新には「知られざる真実」がある【権力闘争による非情の「改革」】
第2章 幕末「心理」戦争【江戸城無血開城までの「西郷×勝」攻防三か月】
第3章 自らを「アヒルの水かき」と揶揄した男【私が勝海舟に惹かれる理由】
第4章 圧倒的薩長軍に抗したラストサムライ【河合継之助の「不合理を超える」生き方】
第5章 なぜ竜馬はみなに愛され、そして殺されたのか?【「独創性のない」偉大なコーディネーターの素顔に迫る】
第6章 「薩長同盟」は馬関から始まった【桂小五郎、高杉晋作と坂本龍馬の「理屈抜きの友情」】

 

半藤さんはこの本の中で、教科書で教えられた「明治維新」は、実は、勝者が創り上げた、いわば「薩長史観」であり、うかうかすると「薩長=開明派 幕府=守旧派」という図式を思い浮かべてしまうと語っています。

 

おそらく、ほとんどの人がこのような認識ではないのでしょうか。

 

しかし、史実を細かく分析していくと、その認識は異なっていると半藤さんは訴えます。

 

実際は、幕府側には開明的な人材も多く、老中の阿部正弘などは有為の人材を次々に登用し、階層を無視し、広く意見を募ったそうです。

 

さらに、薩長軍と幕府軍が戦った「鳥羽・伏見の戦い」。

 

この戦いで薩長軍は、「錦の御旗」を立て、官軍(天皇側の軍)として示すことで、勝利が決定的になったわけですが、この旗は、実は朝廷からもらったものでもなんでもなくて、岩倉具視が勝手につくった代物だったとか。

 

本来では、官軍ではなく、ただの西軍。それを捏造品を使用したことで、強引に勝利に持ち込んだというわけなのです。

 

この時代を生きた、半藤さんの祖母は、半藤さんが幼い頃、繰り返し、下記のようなことを言っていたそうです。

 

「明治新政府は泥棒じゃ。無理やり喧嘩をしかけおって、7万4000石を2万4000石に減らして長岡藩を再興させた。恩典などというが、5万石を強奪していったんだ」

 

このように、勝者となった薩長は、徹底的に敗者をやりこめます。政府や軍部などの主要ポストはほぼすべて薩長の人々がおさえたとか。

 

こうして勝者であった薩長が歴史の見方をも自ら創り上げていったというわけなのです。

 

勝者が歴史を創るというのは、古今東西に共通することですね。体制を維持するためには仕方のないことなのでしょう。

 

歴史にかかったバイアスを解いてみると、実に様々なことが見えてくるものだと、実に興味深かったです。

 

こんな人におススメ!

・明治維新について、様々な見方をしたい人
・勝海舟という人物の素晴らしさを知りたい人
・坂本龍馬が活躍出来た理由を知りたい人

 

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読書日:2016年4月

 

『もう一つの「幕末史」』半藤 一利著

 

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