トップページ > 【評価順】ビジネスの本> 【読書感想】『吉野家で経済入門』安部 修仁 伊藤 元重
縮小する外食産業で闘い抜くビジネスマンの姿
『吉野家で経済入門』安部 修仁 伊藤 元重著 書評
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80年の倒産後、再建を尽くし、2014年に代表取締役を退任した、吉野家「中興の祖」ともいうべき安部修仁さんと、東京大学大学院経済学研究科教授の伊藤元重さんの対談。
安部さんが経営体験を語り、伊藤さんがそれをフォローするという内容です。
本書は2016年2月に刊行していますが、2002年に同様の形式で『吉野家の経済学』という著書を出しており、刊行後の経営を語るという座組のようです。
目次を読むと、吉野家にもいろいろなことがあったなあとしみじみ感じます。
特に2003年にBSE問題が発生し、米国産牛肉の輸入禁止により、しばらく牛丼を食べられなかったことは強烈に記憶に残っていますね。
目次
1章 「うまい」の戦略は細部に宿る 牛肉の秘密
2章 食材のこだわり 米・玉ねぎ・生姜・たれ
3章 「牛肉がない!」BSE騒動における危機管理
4章 デフレに揉まれて 熾烈な価格競争の舞台裏
5章 海外展開の波乱万丈
6章 もう「海外産業はブラック」とは呼ばせない 吉野家流育成の妙
7章 「牛丼の吉野家」ではなくなる日 新メニューへの挑戦
BSE騒動、デフレによる価格競争、外食企業で働くことは「ブラック」だというイメージ、人口減少に伴う外食産業の縮小・・・。
次から次に起こりうる変化に、どのように対応していたったかが読みどころ。
本書で語られる安部さんの経営手腕はとても参考になり、外食産業以外で働いているビジネスマンにとっても大変参考になるでしょう。
そして、吉野家愛好者である私にとって興味をひかれたのは、商品の品質を良くしようととことん追求する企業姿勢でした。
本当に細部まで研究し、徹底しているのです。
・牛肉の厚さは1.3ミリ
・牛丼に合う米を追求し、独自ブレンドを開発
・玉ねぎ・生姜も妥協を許さず世界各地から良いモノを選出
・たれには「白ワイン」を入れる
何度食べても食べ飽きるどころか、また食べたくなる牛丼の開発過程がわかり、また、だからこそあれだけ、おいしい商品が提供出来るのだと感心しました。
吉野家に限らず、今の外食産業での最大の課題は、人口縮小に伴う、パイの奪い合いにあるといえるでしょう。
そのような中で吉野家が対応している、「吉呑み」企画やベジ牛、麦とろ、鰻重といった新商品開発によるターゲット客層の拡大、海外展開などは、変化に対応する能力の高さを感じます。
本書を読み、吉野家は牛丼を核にしながらこれからもますます進化を続けていくのだろうと思いました。
世の中の環境変化に対し、ビジネスも臨機応変に対応していかなければいけないということですね。
こんな人におススメ!
・変化の激しい業界で働いている人
・吉野家の牛丼が好きな人
・ここ10年の外食産業の変化を知りたい人
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読書日:2016年8月
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