様々な事情であいりん地区に導かれた人々の人情
『釜ケ崎有情』神田誠司著 書評
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日本で最大の「日雇い労働者の街」といわれる大阪釜ヶ崎(通称あいりん地区)に関わる人々を著者が取材してまとめた一冊。
あいりん地区はニュースや新聞などで知っていた程度ですが、「日雇い労働者の街」そして、「治安の悪い街」という印象でした。
そのような街の実態をより詳しく把握したいと手に取りました。
本書は全部で12の話があり、漫画家、ピアニスト、組合活動家、神父、僧侶、詩人など釜ヶ崎に住む登場人物の職業も様々です。
そんな中で無私の心で釜ヶ崎に住む人々を助けようとする方々や、苦しい境遇に陥っても優しい心を持ち続ける方が存在していることがわかります。
人間の素晴らしさ、愛おしさを感じさせてくれるエピソードが多く盛り込まれています。
これだけの取材を丁寧にこなした著者の苦労もしのばれます。
その反面冒頭で、「釜ヶ崎にいるホームレスは雨の日が嫌い」と書かれています。
それは何も雨に濡れるのが嫌いだからというわけではなく、酔っぱらったサラリーマンが、傘で段ボールハウスを突き刺してくるからなのだそうです。
酒臭い息で「自業自得だろ」「社会のくずじゃないか」とケラケラ笑いながら言葉を浴びせてくる…。
以前、ニューヨークで6年間ホームレスとなった日本人が書いた『ニューヨーク底辺物語』を読みましたが、そこでは善意の人が次々とお金や食べ物を恵んでくれ、毎日美味しい物を食べ、お金も増えすぎてむしろ困るということが書かれていました。
この状況と比べると日本というのはストレスフルな社会であり、寛容性が足りないのはないかと思えてなりません。
それはセーフティネットの仕組みが足りていない、もしくは日本人に心の余裕がないためなのではと推測しますが、日本に住んでいる身としていささかガッカリもしました。
少しづつでもこの傾向が改善されていくことを強く望みます。
こんな人におススメ!
・大阪・釜ヶ崎の実情を知りたい人
・大変な環境の中、善意で努力している方々から学びたい人
・セーフティネットが足りていない課題を把握したい人
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読書日:2014年11月
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