『男はつらいよ』前史。寅さん誕生の秘密にせまる
『渥美清―浅草・話芸・寅さん』堀切直人著 書評
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著者は文芸評論家であり、膨大な資料を駆使して作り上げた渥美清さんの評伝。
よくここまで調べ上げて書いてくれたといった印象で、渥美清さんの実像がありありと思い浮かぶようでした。
本書では渥美清さんが喜劇俳優としてデビューしてから「男はつらいよ」で活躍するまでの過程を中心に書かれており、「男はつらいよ」以前のエピソードが豊富です。
このようにして「寅さん(=渥美清さん)」という魅力的な人格が出来上がったのだなということが理解出来ました。
元々、渥美清さんの演技の表現力、話術は飛びぬけており、注目はされていましたが、肺結核になり療養生活を送り、死と直面することで、人の優しさが身に沁み、芸に深みが出てきたようです。
退院後テレビに進出し、テレビドラマ版「男はつらいよ」誕生の流れとなるわけです。
テレビドラマから映画になる経緯も詳しく書かれており、元々は山田洋次さんの決死の映画化提案だったそうで。
運命というものはわからないものだと思います。
この他、多くのことが本書でわかり、大いに刺激を受けました。
・デビュー当時から渥美さんを支え続け、世間に注目されるようになってからそっと身を引いた踊り子の存在
・「男はつらいよ」にずっと出ている関敬六さんと渥美清さんは、浅草フランス座時代から下積み時代を支えあっていた仲だった
・「男はつらいよ」初代おいちゃん役森川信さんと渥美清さんの掛け合いは、「男はつらいよ」以前から別の作品で既に行われていた
・テレビ版「男はつらいよ」のキャストはシリーズ5作目の「男はつらいよ 望郷篇」に総出演している
などなど裏エピソードのような話が満載になっています。
渥美清さんは「偉い人」が嫌いだったそうで、市井の人々に優しい眼差しを向ける人柄だったそうです。
それは、売れない時に支えてくれた踊り子や仲間の存在、そして療養生活で死と向き合うことで培った資質ということになるのでしょう。
様々な要素が渥美清さんのキャラクターを構築し、「男はつらいよ」の寅さん役で花開いたということがわかる一冊です。
こんな人におススメ!
・渥美清さんの優しい人柄の裏付けを知りたい人
・「男はつらいよ」にまつわる前史を知りたい人
・渥美清さんに関わった人々による数々のエピソードを知りたい人
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読書日:2015年8月
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