魔性の女に翻弄される男の弱さを描く
『噂の女』奥田英朗著 書評
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著者の奥田英朗さんは好きな作家の1人。
『純平、考え直せ』でも書きましたが、ストーリーの運び方がとてもうまく、どんどんのめりこんでしまうのです。
ラストがアッサリしているという点は少々残念ですが、読む時間が楽しいのでそれはそれで良いという感じです。
本書もこのパターンになっていました。
この話は岐阜が舞台であり、糸井美幸という20代後半の女性が中心人物です。
この女性は「魔性の女」であり、短大卒だった普通の女性が女の魅力を駆使して、店員を振り出しに玉の輿婚をなしとげ、高級クラブのママにまでのし上がっていきます。
この過程で様々な男がこの女性のとりこになり、財産を次々に取られていきます。
話の構成が見事で全部で10章あるのですが、それぞれの章では糸井美幸が職を変えながら男を翻弄していきます。
「中古車販売の女」「麻雀荘の女」「料理教室の女」・・・といった具合です。
そして、各章ではそれぞれ別の人物が登場し、その人物の視点から糸井美幸を見つめていくのです。
最初の「中古車販売の女」では、高校時代の同級生だった北島雄一が主人公になり、中古車販売で働いている糸井美幸を見つけるといった具合です。
糸井美幸は各章の登場人物から「謎の女」というように見られます。
そして、このような女性が実在したら、たいていの男はイチコロになり、財産全てを取られてしまってもやむおえないかもと思うのです。
このあたりのリアリティな作りこみが奥田作品の魅力になっています。
「もしかしたら地方にはこんな人実在するのかも」と感じさせます。
恐らく男性の方が、読んでみるとより話に引き込まれてしまう内容になっているのかもしれません。
こんな人におススメ!
・奥田英朗作品の巧みなストーリー展開を堪能したい人
・実際にありそうなリアリティのある小説を読みたい人
・魔性の女が出てくる物語を楽しみたい人
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読書日:2015年3月
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