どんな人でもちょっとしたことがきっかけで、犯罪に手を染める可能性がある
『熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録』井川 意高著 書評
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大王製紙の創業家経営者である井川意高が、個人的なカジノの賭け金のために、2010年4月から2011年9月までの総額で100億円を超える金を不正に引き出していた。
当時このニュースを聞いた時は衝撃を受けました。
この方は創業家3代目にあたり、「バカ息子」の典型のような印象を受けました。しかも、カジノで100億円とは…。
とんでもない事があるもんだと思ったのです。
本書はそんな井川意高さんによる懺悔録になります。
大企業の経営者ともあろう人が、なぜこんなバカな行動に出るようになったのか。興味は尽きず手に取ってみました。
本書ではご自身の生い立ちから経営者時代までの半生を振り返っています。
中では芸能関係などの華麗な交友録も実名で書かれており、芸能人の夜の顔が暴かれる項目も。
そしてカジノにハマる経緯やその振り返り、今後についても綴っており、興味が尽きることはありません。
読んでみて井川さんは仕事においては極めて優秀で成果も残し、逮捕後も仕事に関する批判が出ていなかったという点が印象的でした。
それだけにカジノのようなギャンブルというのはいかに恐ろしく、中毒性を持ったものであるのかというのも身に染みてわかりました。
私は裁判の傍聴に過去何度か行ったことがあるのですが、麻薬や詐欺など意外にも一部上場企業で働いているような真面目な人が犯罪を犯しているケースも少なくありません。
どんな人でも井川さんのように、ちょっとしたことがきっかけで犯罪に手を染める可能性があると思うと身が引き締まります。
また巻末において、王子製紙から追われてからむしろ性格がずいぶん明るくなったと語っていたのは予想外でした。
抱えていたストレスのうち8割は解消されたとのことで、創業家として仕事をするプレッシャーと宿命は相当なものであったのだと推測されます。
最後にノンフィクション作家の巨匠で『あんぽん』などを発表している佐野眞一さんがこの事件に関し、出鱈目な記事を書いたことを批判しており、佐野さんの作品に対する信頼度が一気に下がりました。
本書は虚実織りまぜた内容で、人間の闇の部分の存在を認識させてくれるものとなっています。
こんな人におススメ!
・大企業の経営者がカジノにハマり巨額の借入を会社から行った心理を知りたい人
・創業家として生きることのプレッシャーや苦しみを知りたい人
・芸能界の夜の交友録を詳しく知りたい人
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読書日:2015年9月
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